2021 Fiscal Year Research-status Report
我が国の汚職に関する実証分析:効率賃金仮説に基いて
Project/Area Number |
20K01728
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
石田 三成 東洋大学, 経済学部, 准教授 (40571477)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米岡 秀眞 山口大学, 経済学部, 准教授 (20825301)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 汚職 / 給与 / 不祥事 / 地方公務員 / 地方自治体 / 効率賃金仮説 / 給与減額措置 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、我が国の地方公務員を対象として汚職が発生する(汚職を抑制する)要因を定量的に明らかにすることである。具体的には、(1)地方公務員の賃金水準を引き下げると汚職は増加するか、(2)ガバナンスの強化(監査制度、情報公開制度など)や、人事政策(採用政策など)によって汚職を抑制できるか、の二点である。 (1)に関しては、一般に男性のほうが女性よりも汚職に手を染めやすいという国外の既存研究より、男性および女性の公民賃金格差が汚職に影響を与えているという仮説を検証するため、男女別の公民賃金格差を算出するためのデータ収集を試みた。しかし、後述するように期間内にデータを収集できる見込みが低いことが判明したため、方針転換をせまられた。そのため、これまでは一般職の公務員の汚職事件を対象としていたが、首長などの特定職にも範囲を広げ、その汚職事件も対象とした分析に着手した。 (2)に関しては、わが国では中央省庁から地方自治体への出向が頻繁に見られることから、出向制度がガバナンスとどのように関係しているかに関する基礎的な調査を行った。その結果、中央官僚出身知事のもとで財政状況が改善傾向にある中で、さらに総務部長ポストに中央官僚出身者が登用されることで、その相乗効果として財政状況が顕著に改善する傾向が見出されることが明らかになった。この知見を踏まえ、今後は、出向者を受け入れているか否かが汚職の発覚に影響するかを次年度に検証したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
既存研究によれば一般に男性のほうが女性よりも汚職に手を染めやすいという知見を踏まえ、わが国における男性・女性の公民賃金格差を明らかにしようとした。同性の民間賃金と比較して、女性の地方公務員のほうが相対的に賃金が高いのであれば、女性の汚職は少なくなると考えられる。これを検証するために、個票データの提供またはオーダーメイド集計の作成を所管省庁に打診していたが、人事異動の引き継ぎがうまくなされていなかったようで、ほとんど作業が進んでいなかったことが判明した。残された研究期間を考えると、でーーた収集に時間のかかる研究を進めるのはリスクがあると判断し、上述「研究実績の概要」記載のような方針転換を行った。こうした状況を踏まえ、今年度の進捗状況は「遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
首長を含む特別職の汚職および出向官僚のガバナンス効果に関しては、ともにデータがある程度揃っているため、今年度はデータの整理と実証分析を進める。その成果を2022年度中に発表し、同年度中あるいは2023年度中に査読誌等に掲載されることを目指す。また、今後は、このふたつの研究に資源を投入することとし、男性と女性の公民賃金格差のデータに関しては、データの取得は進めるものの優先度を落とすこととしたい。
|
Causes of Carryover |
男女別の公民賃金格差に関する指標を作成するため、統計所管省庁に情報公開請求又はオーダーメイド集計を依頼することを予定しており、その財源を確保していた。しかし、担当部局においてその作業が進んでないため、今年度は当該経費にかかる支出はなかった。 次年度に改めてオーダーメイド集計を依頼することとし、次年度に当初通りの支出額を執行する予定である。
|
Research Products
(5 results)