2020 Fiscal Year Research-status Report
雇用終了紛争当事者の行動原理の解明―「超社会性」の論理と「家」の論理を手がかりに
Project/Area Number |
20K01930
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Research Institution | Kawaguchi Junior College |
Principal Investigator |
平澤 純子 川口短期大学, その他部局等, 教授 (50517224)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 雇用終了 / 雇用調整 / 整理解雇 / 雇止め / 紛争 / 超社会性 / 家 |
Outline of Annual Research Achievements |
整理解雇(雇用調整のために実施する解雇)、雇止め(有期雇用契約者に対する契約更新拒否)といった雇用終了は労働者に大きな痛みをもたらし、労使の利害が厳しく対立する。雇用終了の妥当性をめぐる労使紛争が皆無になることはない。 2001年から個別労働紛争処理制度、2006年から労働審判制度が始まる等、企業外部の紛争処理機関の整備が進み、雇用終了紛争の受け皿も多様化した。しかし、企業外部の紛争処理機関の結論は紛争の終結を保障するものではない。むしろ、企業外紛争処理機関の代表的存在である裁判所の場合、紛争は裁判所の判断を出発点とする労使交渉で終結する。また裁判所の判断と逆の顛末で紛争が収束していることも希ではない。企業外部の紛争処理機関が実際の紛争終結に果たす役割には限界がある。企業外紛争処理機関の整備で労働政策は拡充していると言えるが、企業の自律的な経営社会政策の方が国家の労働政策よりも重要であり、まして紛争の予防は経営内部が主導するしかない。 しかし、それは簡単ではない。実際の紛争事例を研究していると、当事者双方に紛争を長期化、大規模化させる言動や意思決定が散見される。こうした一見非合理的な傾向が一貫してみられるのであれば、労使ののそれぞれに道理があると考えるべきである。本研究は、雇用終了をめぐる紛争当事者の、一見非合理的に見える言動や意思決定の原因となる行動原理を解明し、労使双方の行動原理が折り合いをつけられる自律的経営社会政策の要件をつきとめることを目的としている。 一見非合理的に見える言動や意思決定の背景にある道理を見えるようにするために、まずは労働者側の言動、意思決定を「超社会性」の論理、使用者側の言動、意思決定を「家」の論理で分析していく。本研究の初年度にあたる令和2年度は、まず「超社会性」の論理を究明など、概念装置の設計を中心に取り組み、研究成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は採否に関係なく実施するつもりであったから「当初の計画以上に進展している」状態で進めていた。しかし、採択していただいた2021年の春頃から前倒しで研究を進めることが難しくなった。本研究を計画・応募したのは2020年の秋、新型コロナウイルス感染拡大の前であった。感染拡大を予防すべく、勤務先における教育、学内行政に関連する業務の大幅な変更と増加、研究を進めていく上で人との接触、移動、特に国外への移動に大きな制約が発生し、研究の実施、研究成果の発表ともにペースダウンした。 研究は当初の計画以上に作業が増えるのが常であり、国外への移動は常にリスクがあると想定して研究を続けていたつもりであった。しかし、新型コロナウイルスという感染症の発生もその影響がこれほどのものとなることも想像できていなかった。そのことを恥じている。今後の研究に活かしたい。 今回の感染症拡大で研究の進行は遅れたが、整理解雇や雇い止めといった雇用終了の増加をもたらし、本研究が果たすべき責任を加重させたことも事実である。少しでもペースを取り戻し、コロナ禍での雇用終了紛争に貢献できる研究にしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
人との接触、国内外の移動を伴う研究方法についてはオンラインでできることは切り替えていくなど見直しと調整を進めている。研究成果の出し方についても、当初は毎年国際学会で研究成果を発表することを計画していたが、方法を変えていく。 文献研究や理論研究といったものは計画どおりに進めれば問題ない。
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Causes of Carryover |
研究成果の発表として国際学会への出席を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大のため出席できなくなったこと、人との接触を伴う調査を実施できなくなったことが主たる原因である。 研究成果の成果発表の場や、調査方法の見直しを進めている。
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Research Products
(1 results)