2022 Fiscal Year Research-status Report
企業買収におけるoverpaymentとのれんの実証分析
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20K02055
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
宮宇地 俊岳 追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (90609158)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | のれん / 減損認識 / 適時性 / イベント・スタディ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、企業が計上する買入のれんの巨額化と減損損失計上、および当該減損認識に対する株式市場の反応とに焦点を当てている。1年目は、買入のれんの事後的な会計処理を題材とした実証研究上の先行研究サーベイを実施し、経験的事実として明らかになっていることの明確化に取り組んできた。2年目は、のれんの事後的な会計処理を巡る問題について、日本の財務諸表作成者、財務諸表利用者、会計監査人に対して実施したアンケートの回答結果を比較し、程度の差はあれ、三者ともにのれんの巨額化の問題を回避するうえで、規則的償却を支持していることを明らかにした。 3年目は、巨額化するのれんについて減損損失が認識され、その事実が報道された際に株式市場はどのような反応を示すかについて、短期の株価反応、長期の株価反応、短期の出来高反応の3つイベント・スタディを実施した。 短期の分析の結果として、アナウンスメント日周辺において、株価は有意な負の反応が確認され、出来高の分析でも、アナウンスメント日周辺において正の異常出来高反応が確認された。また、長期の分析の結果として、アナウンスメント日より前の長期間にわたって累積異常リターンが低下していることが確認された。 これらの結果から、市場参加者はのれんの減損に関するアナウンスメントに反応しており、のれんの減損損失の公表には確認価値としての情報価値が含まれていることが明らかとなった。また、のれんに減損が発生していることは、減損アナウンスメントのかなり前から市場参加者に予想され株価に織り込まれていることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、令和4年度は、のれんの減損損失に対する株式市場の反応の実証分析の成果を英文化し、国際学会の報告等を通じて海外へ研究知見を発信する予定であったが、前年度の遅れの影響を受け、今年度は実証分析を実施し知見を得るに留まっており、英文化までは踏み込めていない。
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Strategy for Future Research Activity |
企業が計上する買入のれんの巨額化と減損損失の認識、および減損アナウンスメントに対する株式市場の反応については、イベント・スタディを実施したことで、一定の研究知見は得られている。今後は、実施済みの分析を深める意味で、追加的にコントロールすべき変数がないかについての検討を行い、英文化の作業を進めて行く予定である。
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Causes of Carryover |
研究成果の英文化ならびに国際発信が行えていないことによる。今後は、追加のデータ購入、英文校正費、国際学会への出張旅費等での使用を予定している。
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