2022 Fiscal Year Research-status Report
The role of Ama in regional revitalization: regional power as social capital
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20K02060
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
小暮 修三 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60554912)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 海女 / 漁村 / 地域力 / 地域活性化 / 過疎高齢化 / 社会関係資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、原始からほぼ変わらぬ形で素潜り漁を生業とする「海女」が、如何に地方活性化の要となり得るか、その潜在力を提示し、過疎高齢化の進む漁村地域の活性化の一助となることにある。 海女の潜在力とは、その潜水技術や資源管理のみならず、それらを支える女性を中心とした共同性(社会関係資本)、並びに、その地域・継承活動にこそある。そして、このような海女の存在は、海女自身も含めて過疎高齢化の進む漁村地域の活性化の要となり得ると考えられる。 その潜在力を提示するため、本研究では、海女文化の振興を謳う地域、並びに、海女漁の多く行われている地域である12県13地域(石川県輪島市、福井県坂井市、鳥取県鳥取市、岩手県久慈市、静岡県下田市、宮城県石巻市、三重県鳥羽市・志摩市、徳島県美波町、千葉県南房総市、山口県長門市、福岡県福岡市、長崎県壱岐)において、その共同性の在り方と地域・継承活動についての実態調査、対象としては、海女、海女の所属する漁業協同組合や地域共同体(自治会等)、地域行政(県及び市町村)等に対するアンケート及び聞き取り調査を行い、地域活性化への潜在力(地域力)について考察してゆくものである。 先ず、2021年度は、上記内容に関するアンケート及び聞き取り項目の作成、調査対象者の具体的選定等を行い、先ずは文面によるアンケート調査、並びに、アンケート・データの集計及び分析を行った後、6県6地域における聞き取り調査、並びに、三重県で行われる海女サミットへの参加を予定していた。 しかしながら、2019年度末からの新型コロナウイルス感染症の流行(以下、コロナ禍)を受けて、アンケート及び聞き取り項目の作成、調査対象者の具体的選定等を予定通り行ったものの、上記6県6地域における聞き取り調査は、三重県で行われた海女サミットへの参加を除き、未実施(延期)であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度については、2021年度同様のコロナ禍への対応という観点から、当初予定していた紙媒体による質問票の送付は、調査者(本研究代表者)が東京在住者であるため、その調査方法を見送ることとし、現地調査における質問票及び聞き取り調査を同時に行うように研究方法を変更した。 その研究方法の変更結果、またコロナ禍による移動制限が緩和されたことを受けて、2022年度の現地調査については、本研究の全調査地である12県13地域(石川県輪島市、福井県坂井市、鳥取県鳥取市、岩手県久慈市、静岡県下田市、宮城県石巻市、三重県鳥羽市・志摩市、徳島県美波町、千葉県南房総市、山口県長門市、福岡県福岡市、長崎県壱岐)のうち、5県6地域(静岡県下田市、三重県鳥羽市・志摩市、徳島県美波町、福岡県福岡市、長崎県壱岐)において実態調査及び聞き取り調査を行うことが出来た。また、三重県志摩市で開催された「海女サミット」へも参加可能となり、同県鳥羽市・志摩市も含めて各地域における現地調査(及び追加調査)への協力体制(及び追加協力体制)を確保した。 上記現地調査については、その聞き取りの文字起こし、並びに、分析作業を進め、追加調査の必要性(調査対象者や質問項目の追加)も含めて、中間報告として取りまとめてある。ただし、当初予定していた報告の随時WEB公開については、追加調査の必要性から、地域ごとに完成した時点での発表することとし、昨年度の段階でWEB公開は行っていない。 なお、本研究の調査対象者に対しては、特に未調査地域の対象者に対しては密に連絡を取り合っており、いつでも現地調査が可能な状況であり、かつ、一部対象者に対しては遠隔でも調査が可能な体制を整えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記でも触れた通り、昨年度の1年間で、本研究の全調査地である12県13地域のうち、5県6地域において実態調査及び聞き取り調査を行うことが出来た。そこから本年(2023年)度は、本研究の全調査地である12県13地域のうち、上記5県6地域を除いた7県7地域(石川県輪島市、福井県坂井市、鳥取県鳥取市、岩手県久慈市、宮城県石巻市、千葉県南房総市、山口県長門市)において現地調査を行う予定である。 その現地調査の具体策としては、便宜的な地理上の区分、すなわち、関東(千葉)、山陰(山口・鳥取)、北陸(福井・石川)、東北(宮城・岩手)の4地区に分け、関東地区を除く地区ごとの長期(10日間程度)に渡る現地調査を行うこととし、2023年6月には関東地区、7~8月には山陰及び北陸地区、9月には東北地区での実態調査及び聞き取り調査を予定している。 また、同年10月以降には、上記7県7地域における聞き取りの文字起こし、並びに、分析作業を進め、追加調査の必要性(調査対象者や質問項目の追加)も含めて、中間報告として取りまとめることとする。そして、その結果報告については、完成した地域ごとに随時WEB公開を行う予定でもある。 なお、この長期現地調査に関しては、コロナ禍における不幸中の幸いとして実施可能となった大学での遠隔会議や遠隔授業の普及等から、これまで困難であった学期中の現地調査の実施が可能となり、授業を含めた学内業務の事前準備も済ませている。それゆえ、学内的にも長期現地調査が十分可能な状況である。さらに、遠隔による調査も、特に追加調査については、それが円滑に行えるように、ICT環境の整備等も含め、様々な方法による対応が可能なように調査体制を整えている。
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Causes of Carryover |
先ず、本研究代表者は、東京在住者であるため、コロナ禍への対応、並びに、地方在住高齢者の多い調査対象者への配慮という観点から、2020年度及び2021年度に計画されていた現地調査、計10県11地域の実態調査及び聞き取り調査のすべてを延期していた。それゆえ、両年度内の使用額については、基本的に、コロナ禍においても実施可能な遠隔による調査も考慮に入れたICT環境の整備等も含め、臨機応変な対応が可能なように調査体制を整えるための物品費が主な支出となっていた。 しかしながら、2022年度についておいては、本研究の全調査地である12県13地域のうち5県6地域において実態調査及び聞き取り調査を行うことが出来た。そこから2023年度は、本研究の当初からの目的である全調査地の残り7県7地域において現地調査を行う予定である。 よって、本研究においては、当初の予定通りの助成金が必要であるため、次年度使用額が生じている。
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