2020 Fiscal Year Research-status Report
The Effects of Region-oriented Education on Place Attachment and Workplace Selection
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20K02107
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
李 永俊 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (10361007)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花田 真一 弘前大学, 人文社会科学部, 講師 (90636458)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地域志向教育 / 就職地選択行動 / 地元愛着 / 地域間移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、大学における地域志向教育が大学生の地域愛着や就職地選択意識に与える影響について明らかにすることである。本研究では、大学教育のなかでも地域志向教育が大学生の地域愛着意識と就職地選択意識に及ぼす影響について、出身地に留意しつつ、追跡調査のデータを用いてその因果関係を明らかにする。 2020年度には、2019年5月に弘前大学の学生に対して行った「大学生の地元意識と就業に関する調査」のデータを用いて、就業地選択と地元愛着や地域体験学習の関係を、地元愛着と地域体験学習の内生性や多重共線性を緩和するために、操作変数法を応用した2段階推定を行った。 分析の結果、以下のことが示された。まず、地域体験型学習と関連する部分を取り除くと、地元愛着が就業地選択に与える影響は限定的である。今回の推定では、地域にいる必要があるという必要性に関する項目を除いては、有意な係数は得られなかった。このことは、従来の研究で地元愛着の影響としてとらえられていたものは、純粋な地元愛着というよりは地域体験型学習などによって育まれたものの効果であった可能性を示唆している。 次に、地域体験型学習についてもその影響はタイミングによる差がある。より具体的には、実際に就業が意識される高校で行った方が、影響が大きい。特に、高校の時点で地域の企業と直接かかわるような体験型学習を行うことで、地元就職意向を高める効果が見られた。 以上の研究結果は、日本地域経済学会2020年度関東支部研究会(2020年11月22日オンライン開催)、日本地域経済学会第33回全国大会(2020年12月4日オンライン開催)および弘前大学地域未来創生センター主催の政策科学研究会(2020年2月3日オンライン開催)にて報告した。また、論文として取りまとめ、学会誌に査読論文として投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の期間中に明らかにしたい具体的目標として、以下の4点をあげている。①大学での地域志向教育が地域愛着及び地元就職に及ぼす影響を明らかにする。②小中高教育課程における体験型地元志向教育と地元愛着との関係を明らかにする。③労働需要制約、賃金格差などが地方大学生の就業地選択行動に及ぼす影響を明らかにする。④以上の実証分析結果を踏まえて、有効な地方回帰促進策を検討する。また地域住民、行政、移住経験者などを交えて、地域内で共有可能な地方回帰促進策を提案する。 研究初年度であった2020年度は、上記目標の②を達成することが出来た。計画通りに進んでおり、おおむね順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
一時点のクロースセクションデータででは、地域志向教育と地元就職の因果関係を明らかにすることは不可能である。そこで、本研究では大学入学時、就職活動を開始する3年時、就職活動が概ね終了した4年時の3時点の追跡調査を行うことで、地域志向教育が地域愛着や地元就職に及ぼす影響を解明することを目指している。 2021年度は、調査対象者の2019年4月入学者が3年生になる時点である。そこで、第2回目の「大学生の地元意識と就業に関する調査」を2021年8月頃に実施する予定である。2021年度後半には得られたデータの詳細な分析を実施したい。また、最終年度に当たる2022年12月頃には第3回調査を実施し、データ入力が終わり次第、分析を行いたい。最終年度には調査報告書および学術論文を関連学会および学会誌に発表したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナの感染拡大によって、予定していた国内学会および国際学会への参加が出来なかったため、未執行が発生した。次年度は計画当初では予定していなかった、地域間移動性向における新型コロナの影響を把握するためにアンケート調査を拡大実施する予定である。その追加経費として使用したい。
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