2022 Fiscal Year Research-status Report
福祉国家以前と以後の政治テクノロジー:仏19世紀以降の刑罰・公教育・社会的保護
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20K02115
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
前川 真行 大阪公立大学, 国際基幹教育機構, 教授 (80295675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北垣 徹 西南学院大学, 外国語学部, 教授 (50283669)
白鳥 義彦 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (20319213)
中村 征樹 大阪大学, 全学教育推進機構, 教授 (90361667)
村澤 真保呂 龍谷大学, 社会学部, 教授 (80351336)
稲永 祐介 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (80757930)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フランス19世紀 / 統治テクノロジー / 福祉国家 / 自由主義 / ネオリベラリズム / ミシェル・フーコー / 家族 / 宗教 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研共同研究の3年目にあたる本年度も5回の研究会を開催した。さらに、これまでの研究の中間報告として、11月12日、追手門学院大学にて開催された第95回日本社会学会全国大会「学史・学説(2)」部会にて、当該学会会員でもある研究分担者4名により、それぞれの成果報告を行なった。それらは、おおよそ昨年度中に執筆され、本年度末に刊行された『社会学雑誌』no.39(神戸大学社会学研究会)に掲載された、研究分担者、研究協力者6名の論文をもとにしており、今年度前半の研究会で行われた各人の論文の相互検討を経て公表された成果である。 ちなみにこの論集において、前川は刑事政策について、また北垣は新たに主題となった家族、白鳥は教育政策、村澤は社会学史的観点から、また研究協力者の渡邊は精神医学について扱っている。 個別研究の詳細については、学会報告および刊行論文に譲るが、福祉国家の「あと」の時代を、福祉国家の「まえ」の時代との関連において捉えるという本研究会の基本姿勢の意義がおおむね確認される一方、本研究の中心的対象となった19世紀という時代の固有性、とりわけフランスのそれについてのいっそう詳細な研究の必要性が自覚されることになった。 とりわけ本年度の後半には、19世紀の前半と後半におけるディスクールの変化に注目が集まることになった。すなわち啓蒙から規律への変化であり、とりわけ、昨年度の段階で焦点が当てられることになった、「家族」と「宗教」における言説の水準での変化である。それらは、おおよそ社会学、政治学、歴史学といったそれぞれのディシプリンにおける「知」の変容として辿ることができる。 本課題研究は、以上の点の明確化を課題として、研究課題の一年延長を行うことにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一昨年度は、新感染症の影響により、個人研究は困難な状況において着実に前進しながらも、とりわけ研究成果の公表という点では、停滞を余儀なくされていた。しかし、ようやく昨年度には、中間報告の原稿が出揃い、今年度末に『社会学雑誌』の特集「福祉国家・教育・統治、一九世紀フランス社会研究」として、研究メンバーによる成果公表にたどり着いた。さらには、すでに完成していた原稿をもとに、相互の議論と検討を経て、11月の日本社会学会の学史・学説(1)部会において、北垣、白鳥、村澤、稲永によって、それぞれの成果が公表さ、着実な研究の進展とその公表がなされた一年であった。 しかし、年度の後半には、感染症の蔓延の結果、研究代表者の体調不良によって研究会の開催中止を余儀なくされるなど、予定の変更が続いた。すでに新たな課題として意識されていた「宗教」と「家族」という問題系に加え、本年度の後半にはさらに「言説」における変化に理論的な関心が集まることになった最中であった。 そのため、残された課題に取り組むべく、もう一年、研究期間を延長を協議の上で決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
あらためて最終年度となった23年度は、すでに積み上がった個別研究の成果を元に、研究課題の総括と今後の展望を探る年度として位置付ける。まずは昨年度の後半において代表者の体調不良のために中止を余儀なくされ、行えなかったいくつかの研究報告と、ディスカッションを改めて行うとともに、とりわけ第三共和政がもたらした人文諸科学における認識、およびディスクールに現れたその変化に注目しつつ、本研究課題の総括として、あらためてこの時期の知(=科学)の布置についての再検討を行うことになる。
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Causes of Carryover |
新型感染症の蔓延以降、今年度においても、とりわけその前半に関しては一定の制約のもとでの開催となった。またそれに合わせて、今年度も研究会の開催については、前半は遠隔、沈静化が認められた後半についても遠隔と対面を併用しての開催となったため、人件費支出は当初の予定額を大きく下回ることになった。 また前年度に引き続いて、年度の後半には、研究代表者を含めた複数名が体調不良に苦しんだことも、最終段階において研究計画にも狂いが生じた理由のひとつになっている。
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Research Products
(15 results)