2020 Fiscal Year Research-status Report
Reenactments in Deriberations
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20K02116
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
小宮 友根 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (40714001)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エスノメソドロジー / 会話分析 / 裁判員評議 / reenactment |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は2020年1月に実施した模擬裁判の録画データのトランスクリプト作成を進め、「再現」実践のデータコーパスの拡充をおこなった。結果として、これまでも収集してきた評議参加者が言語的・身体的資源を用いて事件当時の状況を再現する方法のデータに加え、再現実践が開始される状況についても、これまでとは異なったタイプのデータを得ることができた。 応募者がこれまで収集したデータにおいては、再現実践は主として参加者が順々に自身の意見を述べるコンテクストにおいて、自身の意見を補強するためにおこなわれていた。他方、新たに収録した録画データにおいては、争点となっている事柄に対する検察官や弁護人の記述になんらかの曖昧さや不十分さを参加者が感じた場合に参加者全員によって事件の状況の確認がおこなわれる、そのコンテクストにおいても再現実践がおこなわれていた。この場合には、再現実践は意見の補強ではなく争点をより明確にするためにおこなわれている。このことは、それだけ見れば特に「曖昧」な点がないように見える表現が事件の当事者にとってどのような意味を持っていたかを明確にしようとする際に再現実践が生じるというこれまでの応募者の研究と整合的である。 今後は拡充されたデータコーパスをもとに、データの比較分析をおこなう。それによって再現実践の機能についてより明確にするとともに、再現実践の生じるコンテクストと、その実践の詳細の関係をあきらかにすることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度はcovid-19の影響によってあらゆる業務に想定外の作業が発生し、当初予定していたエフォートを本研究課題に割くことができなかった。また、研究会をオフラインで開催することも困難となり、分析を相互検討することも予定どおりにおこなうことができなかった。そのため、データコーパスの拡充と分析については作業を進められたものの、これまでの分析を論文化するという当初の計画を遂行することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
covid-19の影響は続いているが、2年目となりルーティンで対応できる問題も増えてきているため、2021年度は予定どおりのエフォートを割くことができる見込みである。そのためまずは昨年度計画どおりに遂行できなかった既存の分析の論文化を進める。その上で、昨年度整理した新たなデータについても分析を進め、その成果について学会報告をおこなうことを目指す。
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Causes of Carryover |
covid-19の影響により、予定していた国外・国内学会出張、および国内研究会への参加旅費がすべて執行できなかった。また、研究計画に遅れが生じ、予定していた論文の執筆に至らなかったため、英文校閲費等の人件費・謝金についても執行することができなかった。2021年度については2020年度に予定されていた分も含めて人件費・謝金を執行予定である。旅費については国内出張については予定よりは回数が減るものの執行予定である。国際出張についてはcovid-19の流行状況およびワクチンの接種状況による。執行されなかった旅費については、新たな模擬裁判を実施するための費用とすることも検討している。
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