2022 Fiscal Year Research-status Report
Reenactments in Deriberations
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20K02116
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
小宮 友根 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (40714001)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 裁判員裁判 / 会話分析 / エスノメソドロジー / reenactment |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は9月から本研究課題を基礎課題とする国際共同研究(A)によってUCSBに滞在し、本研究の分析手法である会話分析の分析技能の向上と、これまでの分析のアウトプットに取り組んだ。 会話分析の方法論的整理については、山崎敬一編『ハンドブックEMCA』(新曜社)に、会話分析の創始者であるハーヴィ・サックスの代表的論文の翻訳と解題論文を寄稿した。また、会話分析がいわゆる「質的研究」の中で持つ独特の位置についても、井頭昌彦編『質的研究アプローチの再検討』(勁草書房)に論文を寄せた。 分析については、これまでおこなってきた裁判員裁判の評議の会話分析の成果を、研究チームメンバーとともに『裁判員裁判の評議を解剖する』(日本評論社)という書籍にまとめることができた。さらに、本研究課題のテーマである再現実践についても、編者となった『実践の論理を描く』(勁草書房)という書籍において、評議参加者が自己の身体を用いて他者の身体を表現する実践の多様性を素描する論文を発表することができた。 これらの実績は、会話分析という方法の意義についてひろく社会学内外に周知する意義を持つ。また、裁判員裁判の評議において、被告人や被害者のおかれた事件当時の状況を「推論」するために評議参加者がいかなるリソースを利用可能であるのか、また「身体を用いた再現」という特定のリソースの利用が、評議コミュニケーションの展開のどこで生じ、どのような帰結をもたらしうるのかについて解明するための端緒を提供している点で、評議コミュニケーションの研究、ひいては「身体」を用いた人間の相互行為の研究の展開に示唆を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のとおり、本研究課題を基礎課題とする国際共同研究(A)によってUCSBに滞在していることで、これまでおこなってきた分析について一定のアウトプットをおこなうことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
再現実践にかんするより精緻な分析について、6月末に開催される国際会話分析学会と、8月に開催されるアメリカ社会学会において報告予定である。その後、両報告を論文にまとめ、国際誌に投稿することで本研究課題の目的は果たされる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響等のため、報告予定だった学会の参加に支障が生じたり、データ分析において調査協力者である法実務家と緊密な連絡を取ることが困難となったことなどが原因で、分析の遂行に遅れが生じていたため。今年度は多くの学会がコロナ禍以前の開催形態に戻っているほか、法実務家との研究会も実施可能であり、それらのための旅費を支出する予定である。
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Research Products
(6 results)