2022 Fiscal Year Research-status Report
医療機関におけるソーシャルワーカーによるがん患者の家族へのグリーフケア
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20K02220
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
金子 絵里乃 日本大学, 文理学部, 教授 (40409339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 繭美 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (90407057)
澤田 有希子 関西学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (60425098)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グリーフケア / 緩和ケア / ソーシャルワーカー / 医療ソーシャルワーカー / ソーシャルワーク / 新型コロナウィルス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に続きインタビュー調査を行い、収集したデータを分析し、その結果について学会発表を行った。データ収集は、半構造化インタビュー法に基づき、がん患者と家族の支援をしているMSWに対して90分程度のインタビューを行った。データ分析は事例分析を行い、事例を検討し、共通性を抽出した。
データを分析した結果、新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、①家族と患者の面会禁止および面会制限、②患者・家族とMSWの面談制限が生じ、がん患者とその家族へのMSWによる支援が変化していることが明らかとなった。支援の変化は、以下の2つについて多くが語られた。1つめは、家族が患者に直接会えない状況において、医療者は丁寧に患者の病状について電話や面談などで家族に伝えているが、医療者による説明が家族に適切に伝わっていないことが多く、患者の病状や状態像について家族の理解にズレが生じていた。そのズレをできる限り埋めるため、MSWは患者の病状や様子をできるだけ丁寧に家族に伝えることを心がけていた。2つめは、家族と患者の面会禁止や面会制限のために、緩和ケアに移行するタイミングで、緩和ケア病棟やホスピス・施設への転院ではなく、自宅に帰る患者が圧倒的に多くなり、退院支援のあり方が変化していた。MSWは面談の帰りに、患者のリハビリの様子を家族に見てもらう機会を作り、患者が現在どれくらい歩けるのか、身体機能がどの程度低下しているかを知ってもらうなどの工夫をして、患者が自宅に戻った時のイメージを家族が思い描くことができるような退院支援を行っていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19により、インタビュー調査の実施は遅れていた。今年度、4名へのインタビュー調査を実施し、合計20名へのインタビュー調査が完了した。また、インタビュー調査結果の中で、医療ソーシャルワーカーのコロナ禍の対応に特化した内容を分析し、「コロナ禍におけるがん患者とその家族への医療ソーシャルワーカーの支援の現状と課題」というテーマで学会発表を行った(2022年10月8・9日:第29回日本ホスピス・在宅ケア研究会奈良大会)。また、月に1回程度の研究会を開催し、文献研究や調査方法の検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に引き続き、2023年度もオンラインの研究会を定期的に実施し、がん患者やその家族へグリーフケアを行っている医療機関のソーシャルワーカー20名に実施したインタビューデータを分析する。すでに2022年度の研究を通してコロナ禍における医療ソーシャルワーカーの支援の課題と変化には、医療関係者と患者・家族との間の情報伝達や退院支援が大きいことが明らかにされている。 今後は、ソーシャルワーカーが緩和ケアを行うことや家族のグリーフケアを行うことの難しさやジレンマに注目して、学会における研究報告に取り組むとともに、論文を学術誌に投稿する予定である。また、調査に協力いただいた医療ソーシャルワーカーへのインタビューを通して得られたエピソードをもとに事例集を作成することを目指したい。
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Causes of Carryover |
今年度、対面でのインタビュー調査(5名)、及び、地方で開催する学会へ参加する予定であったが、コロナ禍においてインタビュー調査及び学会への対面参加が困難であったため、関東ー関西間、関西ー中部間等の旅費を使用する機会がなくなった。また、月に1度開催している共同研究会も、対面ではなくzoomで行い、関東ー関西間の旅費等の使用がなかったため、当初予定していた使用額(主に旅費・会議費)よりも低い額となった。 次年度は、対面での学会への参加、また、zoomと対面の両側面から共同研究会を実施し、前年度使用できなかった旅費や会議費を活用したいと考えている。
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Research Products
(1 results)