2023 Fiscal Year Annual Research Report
カンボジアの移住労働が子どものwell-being環境に与える影響の分析
Project/Area Number |
20K02250
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
島崎 裕子 早稲田大学, 社会科学総合学術院(先端社会科学研究所), その他(招聘研究員) (90570086)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 移住労働 / 子ども / カンボジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①移住労働が日常となっているカンボジアを事例に、人身売買や労働搾取に巻き込まれる危険性の高い貧困層の家族の出稼ぎが「子どもにもたらす影響」を分析し、②子どもを含む家族のWell-beingがまもられる社会のありかたを考察した。具体的には、③国際開発学と国際社会福祉学の両視点を組み合わせ、出稼ぎ労働によって翻弄される子どもの社会的保護の実態分析を行った。 子どもも含めた「家族移動」を考察すると、長期型世帯、季節労働を含む短期型世帯では、子どもにもたらされる社会資源の提供や影響に差異が生じる為、保護のありかたや政策をより幅の広い視野で検討することが望まれることが見いだせた。 特に、長期的出稼ぎ労働者たちが集まる居住地においては、隣国越境による就労状況が家族の経済・社会状況、その世帯の動態に子どもの生活環境が強く影響をもたらし、子どもたちのwell-beingは不安定なものになるといえる。またそれらの経験を経た子どもへの社会的影響は大きく、今後の長期的に追跡調査等を踏まえながら注視していく必要がある。さらに子どもの修学環境に与える影響は深刻であり、中退や退学なども、通常農村に住む子どもと比較しても高いことが見えてきた。 最終年度の調査では、新型コロナウイルスが移住労働者世帯に与えた影響も可視化され、移住労働世帯が抱える脆弱さが浮き彫りになった。従来では、人身売買からの保護といった視点に着眼されがちであったが、人身売買被害者保護という視点のみではなく、国内外における移住労働者保護という視点からも、国家として今後どのような政策が必要か、特に移住労働者の子どもの保護へと政策を展開していくか問われていく。
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