2020 Fiscal Year Research-status Report
日本における皆年金体制確立に関する歴史及び財政の検証
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20K02264
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
中尾 友紀 愛知県立大学, 教育福祉学部, 准教授 (00410481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畠中 亨 帝京平成大学, 健康医療スポーツ学部, 助教 (70750818)
百瀬 優 流通経済大学, 経済学部, 教授 (00386541)
吉中 季子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (70434800)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国民皆年金 / 国民年金 / 厚生年金保険 / 社会保障制度審議会 / 最低生活保障 / 福祉国家体制 / 社会保険文庫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第一に、国民年金の創設によって確立された皆年金体制とは、どのような体制だったのかを明らかにすること、第二に、それが日本の福祉国家体制の形成にどのように影響したのかを検討することである。このうち2020年度は、第一の目的を達成するために、歴史分析、財政分析、理論分析のうち歴史分析に力点を置いた。具体的には、2回の研究会を開催し、まずは創設時の国民年金の制度設計を明らかにするために、分析対象とする主な一次資料を共有し、その位置づけ等を確認した。 1回目の研究会では、村上貴美子氏(関西福祉大学名誉教授)にインタビュー調査を実施した。インタビュー調査では、村上氏が複写して保管していた旧社会保険庁の社会保険文庫所蔵の国民年金関係資料について、その由来、複写の選定基準、公開の是非等を聞き取った。内容の一部については、後日、文庫設置当時の雑誌記事等を収集し、確認した。 2回目の研究会では、研究代表者の中尾が「社会保障制度審議会勧告と1954年の厚生年金保険法改正」を報告した。その上で、戦後、国民年金の創設が主張されるまでの社会保障制度審議会及び厚生省保険局における公的年金の検討状況について議論した。また、読書会として倉田聡『社会保険の構造分析』(2009年、北海道大学出版会)及び堤修三『社会保険の政策原理』(2019年、国際商業出版)を輪読した。読書会では、特に社会保障法研究における社会保険理論について議論し、メンバー間で知識及び情報の共有を図った。 以上の通り2020年度は特に、共同研究を進めるための基盤となる共通認識の形成に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の影響で、1回目の研究会で予定していたインタビュー調査が遅れたためである。これに連動して、一次資料の把握と共有も遅れることとなった。 また、宣言の影響で、授業形態等が変更となり、本務の業務量が格段に増加してしまい、研究時間の確保が難しかったためでもある。
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Strategy for Future Research Activity |
歴史分析のための主な一次資料は共有できたが、その一部に作成者や作成時期が判明しない資料が見つかった。そこで、2021年度はまず、それらの一次資料を研究に資するものとすることから始める。その上で、各メンバーで不足する一次資料の収集と分析を進め、共同研究上の役割を果たしていくこととしたい。 研究会は今後も定期的に開催し、研究の質の向上を図ると共に、共通認識の形成に努める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の影響で、直接的には、東京や岡山での研究会開催や各メンバーによる資料収集が十分にできなかったためである。また、間接的には、授業形態等の変更で業務量が増加し、十分な研究時間の確保が難しかったためである。 次年度もまた、研究会はWeb会議システムを使用して開催することとなるが、その回数を増やし、各メンバーが必ず報告するようにして進度を早めたい。
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