2023 Fiscal Year Annual Research Report
精神障害に関する啓発プログラム開発:共生社会の実現を志向する意識の涵養を目指して
Project/Area Number |
20K02281
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
大谷 京子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (90434612)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 精神障害 / 啓発プログラム / 効果測定 / スティグマ態度 / 社会的距離 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、やはり中学校での実践はできず、高校のみに焦点を絞って効果測定を実施した。例年と同様、スティグマ態度も社会的距離も有意に改善された。 すべての項目で有意に肯定的変化が見られた。スティグマ態度の因子構造は例年通り「関わりにくさ」と「恥意識」で構成され、それぞれの下位尺度得点も肯定的に変化していた。社会的距離も縮まっていた。 また感想では、従来通りの「精神障害者への意識・偏見・考え方・接し方・イメージ・印象・見る目・感じ方・理念・意見が変わった」というコメントも多くあったが、「強い生き方をしている」「障害も一つの個性として胸を張っている姿がかっこいい」といった、人として当事者と出会えたからこその感想も得られた。Aチームは、「より良い助け手を育てる」=「助けられる側の精神障害者」を伝えることを良しとしていない。しかし「相談を聴いて心の支えになりたい」という、助ける側と助けられる側という二項対立の枠組みで捉える感想が今年度も見られた。一方で「よりそってあげたり特別扱いしないことが大切」というコメントもあり、共生社会の一員として精神障害者を捉える見方を理解する生徒もいた。 基本的には本プログラムのスティグマ軽減に関する有効性が明らかにされた。今年度の結果が例年以上に良かったのは、昨年度の失敗を踏まえてAチームメンバーで語る内容に境界を設定したこと、大学生によるアイスブレイクが受講生のレディネスを高めたこと、シンポジウムの中で生徒が当事者に質問すると行った双方向性が生まれたこと、フロアの生徒とのやりとりが活性化されたことが背景にある。 そうした条件は、昨年度の講義内容から学んだことと、前回実践の反省に立ってチーム全員が検討し、設定したものである。精神障害当事者、家族、専門職すべてが対等な立場で参加する、参加型アクションリサーチとして研究が展開できたと考える。
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