2023 Fiscal Year Research-status Report
重大事故を防ぐための高視認性安全服の活用指針の作成と歩行者用反射材グッズの提案
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20K02409
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
庄山 茂子 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (40259700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松 美和子 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (80815639)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 交通事故 / 反射材 / 夜間 / 傘 / 視認性 |
Outline of Annual Research Achievements |
夜間の歩行者の視認性を高めることを目的に、これまで、携帯しやすい反射材用品の色と着用位置を検討した。交通事故総合分析センター(2001)の報告によると、降水時の死亡事故件数は、非降水時と比較して夜間に多い。そこで、夜間の降雨時における歩行者の交通事故防止を目的に傘の視認性評価実験を行った。4色(黒、紺、青、透明)の傘に、反射テープを「4か所」、「円周」、「放射状」に付けた3パターンと「無地」の傘を準備した。夜間に黒を基調とした衣服を着用し傘を差した歩行者をロービームで照射し、距離100m までを10m 間隔で女子学生20名が評価した。反射テープを付けない「無地」の傘について、20~50m では、視認性評価の高い傘の色は、他の傘より明度と彩度の高い「青」(明度3.5、彩度7.9)であった。事故防止には傘の色も重要な要素であることが認められた。しかし、時速60km に必要な停止距離は44m 以上で、降雨時には必要距離がさらに長くなることが考えられ、「青」の傘は、50m地点において評価4(やや見える)以下であったため、歩行者の発見が遅れることが推察された。反射テープを付けた3パターン(「放射状」「円周」「4 か所」)の傘を比較すると、「放射状」「円周」に付けた傘では、4色すべての傘において、70m 地点の距離までも評価4(やや見える)以上であったことから、反射テープを付けることは、視認性向上に有効であることが明らかとなった。反射テープを付ける位置は、「放射状」と「円周」の視認性評価が有意に高く、「無地」と「4か所」の視認性評価が有意に低かった。「放射状」と「円周」では有意差はみられなかった。反射テープの面積が小さいほど生産コストも低くなること、「円周」は、どの位置で差しても同じように見えることを考慮すると、夜間の交通事故防止のためには、反射テープを「円周」につけた傘が推奨できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、高視認性安全服と反射材グッズに着目し、労働者や市民の安全を守ることを目的としている。2020年度から2021年度は、労働者の視点から、画像処理ソフトを用いてシミュレーション画像を作成して建設現場における作業者の視認性の評価実験を行い、その結果を報告した。2021年度から2023年度は、夜間の交通事故から市民の安全を守るために、歩行者の視点から小学生、中学生、高校生の反射材の活用実態を明らかにしたうえで、高齢ドライバーならびに若齢ドライバーから視認しやすい反射材の色と着用位置について評価実験を行いその結果を報告した。2023年度は、夜間の降雨時の交通事故から市民の安全を守るために、ドライバーから歩行者を視認しやすい傘に着目し、夜間の路上において傘の色や反射テープの有無および反射テープの形状の違いによって、傘の視認性にどのような違いがみられるか検討し報告した。 労働者や市民の安全を守る点から評価実験を行い、学会発表や学会誌に掲載されたことから、おおむね順調に遂行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、夜間の降雨時における歩行者の交通事故防止を目的に、4色(黒、紺、青、透明)の傘に、反射テープを「4か所」、「円周」、「放射状」に付けた3パターンと無地の視認性について若齢者が評価した。その結果、傘を差した状態の視認性を高めるためには、反射テープを「放射状」、「円周」に付けたパターンが有効であることが確認された。但し、評価実験は、若齢ドライバーが評価した研究であり、高齢ドライバーが評価したものではない。携帯しやすい反射材用品の色と着用位置を検討した研究では、若齢者と高齢者擬似眼鏡を装着した擬似高齢者の間に差がみられた。このことから、夜間の路上において傘の色や反射テープの有無および反射テープの形状の違いによって、雨天時に使用する傘の視認性にどのような違いがみられるか、高齢ドライバーの視点からの評価が求められる。今後の研究では、高齢者擬似眼鏡を装着した擬似高齢者が評価した結果を分析し、若齢者とどのような違いがみられるか明らかにする。
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Causes of Carryover |
2023年度に計画していた学会発表は、研究代表者の所属する大学で開催されたことから、旅費として計上していた費用を使用しなかった。また、高齢ドライバーを想定していた視認性の評価実験について、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行されたが、高齢者を対象とする評価実験には慎重であるべきではないかと考え、大学生に擬似眼鏡を装着してもらい実験を行った。そのため、高齢者の大学への交通費等の支出や謝金が生じなかった。これらの理由により、未使用の研究費が生じた。この研究費については、2024年度の学会発表や学会誌への投稿費用として使用することを計画している。
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