2022 Fiscal Year Research-status Report
天然由来合成繊維、天然染料、酸化還元酵素を用いる環境調和型染色加工
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20K02416
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
長嶋 直子 金城学院大学, 生活環境学部, 准教授 (30459599)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 天然色素 / 酵素 / ポリ乳酸繊維 / 染色 / 環境調和型 / 風合い |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度に検討したバイカリン/ラッカーゼの発色の系で、最も濃色となった条件で染色したPLA布の表面特性を、KES-FBを使い調べた。その結果、平均摩擦係数MIUは、未処理<ラッカーゼ処理<バイカリン/ラッカーゼ染色の順に若干の増加がみられた。そこで、有意水準5%で両側検定のt検定を行った。その結果、未処理とラッカーゼ処理のp値は0.05以上であったため、未処理とラッカーゼ処理のPLA布のMIUの平均値には有意差がなかった。一方、未処理とバイカリン/ラッカーゼ染色布、ラッカーゼ単独とバイカリン/ラッカーゼ染色布のそれぞれのMIUの平均値との間については、p値は0.05以下となり、いずれも有意差が認められた。したがって、ラッカーゼで発色したバイカリンを用いて染色したPLA布の表面は滑りにくくなっていることがわかった。 また、表面粗さSMDを見ると、未処理<バイカリン/ラッカーゼ染色布<ラッカーゼ処理の順に大きくなった。先のMIUと同じくt検定を行ったところ、未処理とラッカーゼ処理のp値は0.05以下となり、有意差が認められた。一方、未処理とバイカリン/ラッカーゼ処理、ラッカーゼとバイカリン/ラッカーゼ染色布については、p値は0.05以上となり、有意差は認められなかった。SMDは小さいほど平滑であることを意味する。したがって、ラッカーゼ単独処理によって、PLAの表面が凸凹になるが、ラッカーゼで発色させたバイカリン水溶液でPLAを染色した場合は、ラッカーゼ単独処理に比べて平滑であるといえる。 以上のことから、あらかじめラッカーゼで発色させたバイカリンを用いて染色したPLAの表面は、滑りやすさは減少するものの、凹凸は抑制されていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
予期せぬ手術・加療が必要となり、2022年度の途中から研究を休まざるを得なくなった。復帰後は、授業の補講等の対応が生じたため、さらに研究に取り組む時間を確保することが困難な状況となった。 予定していた実験のうち、染色布の表面特性に関しては、2021年度に染色したPLA染色布を用いることで取り組むことができたが、PLA/綿に対するバイカリン/ラッカーゼ染色に関する染色条件、堅ろう性、物性、風合いの検討には着手できなかった。そのため、2022年度は、成果の公表には至れなかった。 以上のことから、予定していた計画の多くを遂行できず、大幅に遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の延長をお認めいただけたことによって、2023年度が最終年度となる。体調の様子を見ながら、2022年度に行う予定であった以下の内容に取り組むことを計画している。 2021年度の結果から、PLA布は染色後に引張強度が低下すること、また2022年度のKESによる表面特性の結果から色素/ラッカーゼ染色で滑りやすさが減少する傾向にあることが分かったので、PLA/綿を対象として、ラッカーゼで発色した天然色素による染色を行い、染色堅ろう性、強度、風合いを調べる。 また、これまでの成果をまとめ、学会発表や学会誌等への投稿ができるよう進めていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、突然の入院・加療により、研究に取り組むことが困難になったためである。そのため、当初計画のほとんどを実行できず、2022年度の予算を計画どおりに使用することができなかった。 2023年度は、PLA/綿の堅ろう度、強度、風合いを測定する予定であり、十分な染色布が必要である。そのため、色素バイカリン、バッファー用の試薬、堅ろう度試験用の試薬等、堅ろう度用の添付白布等の物品(消耗品)を購入する。 最終年度にあたるため、成果を公表するための学会参加費、学会誌等へ論文投稿に使用する。
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