2020 Fiscal Year Research-status Report
教職員及び児童生徒の人権が保障される法的視点に立った生徒指導の研究
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20K02482
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
蜂須賀 洋一 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (20824238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅野 正信 学習院大学, 文学部, 教授 (50203584)
藤平 敦 日本大学, 文理学部, 教授 (60462157)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生徒指導 / 教職員の人権 / 児童生徒の人権 / 教職員研修 / 教育裁判例の活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
学校では,いじめや暴力,SNSによる誹謗中傷など児童生徒間での人権侵害や,教職員からの暴言や体罰など行き過ぎた指導による人権侵害が問題となっており,人権を尊重した学校づくりの重要性が増してきている。一方,教職員の側も,児童生徒からの暴力や暴言などの被害や,保護者からの過剰な要望,教職員間のいじめなどが顕在化し,教職員の人権が保障された学校づくりが喫緊の課題となっている。 本研究では,児童生徒,教職員等,学校内のすべての関係者の人権が尊重されている教育の場を確立するために,不法行為に基づく損害賠償請求訴訟に関連する教育裁判事例について,教育法学や生徒指導,人権教育の視点から検討を加える。そして,その検討結果を踏まえ,人権を尊重する生徒指導に関する教職員研修資料及び解説書を作成するとともに,研修プログラムを開発することを目的とする。具体的には以下の研究内容である。 ①現在までに積み重ねられてきた学校内の人権侵害に関する教育裁判事例の判決書を検討し,人権侵害の態様,判決に示される法的義務や責任,対応策等を明らかにする。そして,人権を尊重する生徒指導を進める上で,教職員に必要な知識や考え方となる構成要素を抽出する。②検討結果をふまえ,学校内の人権侵害行為を防止し,権利を回復する方策を学ぶ研修資料及び解説書を作成するとともに,教職員研修プログラムを開発する。③開発した研修資料及び解決書を活用し,小・中学校での教職員研修会を実施し,成果や課題を検証し報告する。④教員養成系の大学の授業において,開発した研修資料及び解決書を活用し,校内の人権侵害防止・回復に関する授業を実施し,その成果や課題を検証し報告する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,4か年の研究期間で,以下のような計画である。 主に1年次-学校内の人権侵害に関する教育裁判事例の判決書の検討(「児童生徒間での加害行為等による人権侵害に関連する裁判事例」「教職員の加害行為等による人権侵害に関連する裁判事例」「教職員自身が被害者となる人権侵害に関連する裁判事例」)。主に2年次-学校内の人権侵害行為を防止し,権利を回復する方策を学ぶ研修資料(判決書資料)及び教職員研修プログラムの開発。主に3年次-小・中学校での教職員研修会の実施と成果や課題の検証。教員養成系の大学での授業の実施と成果や課題の検証。4年次-研究成果しての判決書資料や研修プログラムの実際を掲載した報告書の作成。 1年次は,以下の点を研究成果としてあげる。学校内の人権侵害に関する教育裁判事例の判決書について検討を加えた(特に,「児童生徒間での加害行為等による人権侵害に関連する裁判事例」)。その中で,いじめ問題に関する裁判事例をもとにして研修資料及び研修プログラムの開発を試みた。そして,実際にX県内の中学校で教職員研修会を実施し,その可能性や課題について検討を加えた。さらに,これまで明らかになったことをもとに,教育裁判事例の判決書を活用した教職員研修会の意義等について共通理解を図った。
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Strategy for Future Research Activity |
2年次である本年度は,まず,学校内の人権侵害に関する教育裁判事例の判決書について検討を加える。特に,「教職員の加害行為等による人権侵害に関連する裁判事例」,「教職員自身が被害者となる人権侵害に関連する裁判事例」に着目し,人権侵害の態様,判決に示される法的義務や責任,対応策等を明らかにする。そして,人権を尊重する生徒指導を進める上で,教職員に必要な知識や考え方となる構成要素を抽出する。 次に,これらの検討結果をもとに,人権侵害行為を防止し,権利を回復する方策を学ぶ生徒指導に関する研修資料(判決書資料)及び研修プログラムの開発を試みる。なお,教育裁判事例をもとにした研修資料及び研修プログラムの開発については,学会等で報告予定である。 さらに,教員養成系の大学において,教職員自身の人権侵害行為を防止し,権利を回復する方策を学ぶ授業を実施し,その成果や課題等について検証を試みる。 今後は,学校内の人権侵害に関する教育裁判事例の判決書の検討を多く加えながら,様々な事例を活かした研修資料及び研修プログラムの開発を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大の影響で,予定していた研究会がリモート開催になったため。また,学会でワークショップを開く予定が,中止となったため。 今年度,対面での研究会の開催や学会でワークショップを開く予定で,旅費等に使用する。
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