2022 Fiscal Year Research-status Report
欧米農学導入期における札幌農学校および駒場農学校の総合的研究
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20K02494
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
熊澤 恵里子 東京農業大学, その他部局等, 教授 (90328542)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 札幌農学校 / 駒場農学校 / 獣医開業試験 / 専門基礎教育 / 学問系統 / 農芸化学 / 獣医学教育 / 畜産学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は国内調査を重点的に実施し、北海道大学文書館所蔵資料約90点、北海道立文書館所蔵資料約20点の閲覧・収集、解読・分析を行った。また2022年3月刊行の拙著『幻の女性獣医誕生計画-近代日本の獣医養成史』(東京農大出版会)に関連して獣医開業試験規則第3条による試験免除から外れた札幌農学校獣医学教育の実態を裏付ける新たな史料を発掘すると共に、化学教師ストックブリッジ冷遇の要因もつきとめることができた。これら研究成果については、前者は第93回日本獣医史学会研究発表会で発表済であり、後者は日本化学史学会で発表予定である。 札幌農学校がなぜ獣医開業試験免除の対象校にならなかったのかについては、1886年5月付札幌農学校卒業生からの獣医学卒業証書に関する問い合わせ文書及び回答にその原因を見い出した。駒場農学校卒業生は各科卒業証書を取得できるのに札幌農学校はなぜ取得できないのか。札幌農学校事務係は、獣医学については科目にはあるがそれをもって「該科専修ノ者」と見なすのは難しく自分で専修して受験する外はない、と回答した。本文書から、札幌農学校獣医学教育は「動物学」などの一般講義が中心であり、農商務省管轄下農学校規則改正後に「動物学」「獣医学」「獣医学及同実験」等の関連科目が整備されたが、内科外科実習の機会が十分ではなく、開業試験免除の対象外となったと考えられる。 以上、獣医学教育についての札幌農学校と駒場農学校の違いは、駒場農学校は英国型、札幌農学校は米国型の教育を創設時に導入したことに要因がある。札幌農学校の教育は、後の東北帝国大学農科大学での畜産学教育に繋がる系譜である。この獣医学教育の二つの系譜、すなわち札幌農学校と駒場農学校における近代獣医養成の方向性の違いが浮き彫りになった。これは本研究がテーマとする日本近代農学形成史における学問系統を解明する上で極めて重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍において国外調査を自粛し、国内調査を重点的に実施した。国外調査は科研費調査の研究期限を1年間延長し、2023年度に確保、実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年夏に米国マサチューセッツ州立アマースト大学等での化学教師ストックブリッジの調査を予定している。また、畜産学教育の文献収集も予定している。 2023年春に英国等における獣医学及び農芸化学の最終調査を実施予定である。 コロナの影響による諸物価高騰により、国外調査のための航空券及び宿泊費等の経費が圧倒的に不足しているため、調査日程を短縮することで対応したい。
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Causes of Carryover |
国外調査の渡航先の外国機関との再調整が必要となったため。 2023年度に実施する国外調査については、渡航先の外国機関等は決定済である。
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