2020 Fiscal Year Research-status Report
1930~40年代日本における中国人留学生教育―「相互理解」と「軋轢」の史的考察
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20K02508
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
見城 悌治 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 教授 (10282493)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 留学生史 / 文化交流史 / 東アジア近代史 / 医学教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
1918年に発足した中国留学生の支援団体である「日華学会」について、戦時下の東南アジア留学生受入機関であった「国際学友会」を研究している佐藤由利子氏と共同で、「戦前期の留学生政策における日華学会と国際学友会の役割」(『アジア教育』14巻、2020年11月)という論考をまとめた。これにより、1930~40年代における中国留学生の状況について、比較の視座の下で検討を加えることができた。 一方、1902年にアジア(とりわけ中国)に対する医療支援や、来日した中国人医薬留学生への支援を行っていた「同仁会」という団体がある。この団体が発刊していた『同仁会医学雑誌』(中国語版)の1929年から30年まで、16回にわたり連載されていた「中華民国医界名士録」の分析を行った。すなわち、ここで紹介されていた106名の留学先や現職などを検討する中、日本留学者(50名)について精査し、その特質を明らかにした(見城「近代中国における医学者の海外留学と帰国後の活動」『千葉大学人文研究』50号、2012年3月)。 また、同仁会が1935年に発刊した『中華民国医事綜覧』という大部の書籍に掲載されている中国内で活躍する医師4773名を検討した結果、海外留学経験者が775名であることが判明した。そのなかの日本留学者500名について、日本の留学先(医学校)ごとに名簿を整理することにより、日本で医学薬学を学んだ中国人の状況を相当な精度でまとめることを得た(見城「『中華民国医事綜覧』から見る近代中国の医学者と留学歴」『千葉大学国際教養学研究』5号、2012年3月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1930~40年代に来日していた中国人留学生を支援していた主要な団体である「日華学会」と「同仁会」の資料を用い、それぞれの活動や特質を具体的に明らかにした点では成果を得たと考えている。 しかし、自身の科研テーマである「留学生教育―「相互理解」と「軋轢」の史的考察」における「相互理解」と「軋轢」についての踏み込みは、まだ十分とは言えない。それについては、次年度に果たしていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
日華学会は『日華学報』という雑誌を1927年から1945年まで発刊している。同仁会も雑誌を発刊している。日本語版と中国語版があり、かつ休刊期間もあるが、1930~40年代の留学生支援の様態を窺える内容を十分に含んでいる。 それらを精読することにより、各団体がどのような企画を行い、かつ留学生からの反応がどのようなものであったかを整理し、「交流」の実態とその裏面にある「軋轢」を読み取っていきたい。 また、同時に外交史料館所収史料も活用し、国家(外務省)、大学、留学生のそれぞれの認識を可能な限り明らかにしていきたいと考えている。
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