2022 Fiscal Year Annual Research Report
1930~40年代日本における中国人留学生教育―「相互理解」と「軋轢」の史的考察
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20K02508
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
見城 悌治 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 教授 (10282493)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中国人留学生教育 / 日華学会 / 同仁会 / 満州事変 / 日中戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、中国留学生の支援を行なっていた半官半民団体「日華学会」(1918年設立)の機関誌を用い、満州事変前後において、同会や外務省幹部の留学生認識、また中国留学生の「日本」認識等をまとめた。とりわけ、懇切な留学生教育をしていた関係者が、同時代日本の浅薄な「中国蔑視」を批判し、中国青年の「民族意識成長」を評価していたこと、しかし一方で「黄禍論」批判の如き、人種論的な議論も誌上に提出され、対欧米へのスタンスに加え、日中両国の「提携」をめぐる複雑な議論が展開されていたことを確認した。 また1938年11月に大阪毎日新聞社が、中国語圏に向けて発刊した『華文大阪毎日』が、39年に掲載した日本の帝国大学(9校)の紹介記事を分析する中で、傀儡政権下の中国に対し、各帝国大学での中国研究の実際や留学生OBの中国での動向を明らかにし、「日本側からする」中国への自己宣伝の様態を確認した。 研究期間の1・2年度においては、医薬留学生の支援等をしていた「同仁会」(1902年設立)の活動の検討を中心に行ない、日本で学ぶ医薬留学生の教育支援の実態、また帰国後、彼らが中国の医薬学会でどのような役割を果たしたのか等を、日本側(同仁会)の「期待」や現実と照らすなかで、融和と矛盾を明らかにした。さらに、同仁会の機関誌において、日中戦争勃発前後において、同会が中国(および留学生)に示していた態度や、中国に渡り救護支援を行なった幹部の証言などから、「軍部」とは異なる対応を目論見ながらも、国策に追随せざるを得なかった現実も見た。 これらの研究を通じ、1930年代から40年代、日中関係が不安定であった時期の中国留学生教育の実際や帰国後の動向を、2つの団体やそれに関わった教員や官僚の活動等を分析することで、中国学生との「交流」「相互理解」、また「軋轢」の実際を明らかにすることができた。
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Research Products
(8 results)