2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K02539
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山城 千秋 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (10346744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
農中 至 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (50631892)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 青年団 / 米軍占領期 / 祖国復帰運動 / 産業開発青年隊 / 米軍基地 / 奄美 / 沖縄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦後の奄美・沖縄における〈アメリカ世〉から〈ヤマト世〉へ戻る道のりを青年団による祖国復帰運動との関係から解明することを目的としている。具体的には、奄美・沖縄(宮古・八重山を含む)の青年の間で「祖国日本」という意識がどのように形成されたのか、米軍占領下で青年が祖国復帰運動に求めたものはなんだったのか、島嶼間の差異と共通点に着目しながら、青年団の機関誌(機関紙)をはじめ、地域青年団資料および当事者の証言データ等の分析により明らかにする。 本年度は、コロナ禍により調査への影響を受けたものの、本年度の研究成果を以下の3点にまとめることができる。第一に、継続した研究テーマである青年団機関誌の分析では、機関誌の原本調査である。鹿児島県立図書館での青年団資料調査において、これまで未発であった『青年奄美』1号(奄美大島連合青年団、1953)の存在を確認できた。本誌は役員体制が一新され、祖国復帰が確定した時期の貴重な一冊であり、奄美の青年が祖国復帰にどのような期待を抱いていたのかを知ることができる。その他に、沖縄県立図書館、沖縄県公文書館、沖縄県青年会館等で、コロナ禍による閲覧制限があったものの、青年団関係の資料調査を実施した。 第二に、復刻版の作成と解説の執筆である。米軍占領期に発刊された沖縄青年連合会『沖縄青年』、奄美大島連合青年団『新青年』『青年奄美』、沖縄産業開発青年隊『青年隊だより』を不二出版より復刻するため、資料解説の執筆を行なった。復刻版は2021年6月に刊行予定である。 第三に、中頭青年団OBの証言の記録化である。機関誌のような文字資料を持つ青年会が多くないなかで、活動実態を知る唯一の手がかりが当事者の証言であり、昨年11月に高宮城清氏に聞き取り調査を行なった。高宮城氏はコザ市青連の第9代会長を務め、教員でありながら復帰運動にも関与した人物である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響を受けて高齢である証言者との接触が難しくなったものの、コロナ収束後にはいつでも調査できるよう青年団OB会との連絡調整を密に取っている。また、図書館が幸いにも閉館にならなかったことで、資料調査は順調に進めることができた。しかし、関係者との対面接触が難しい状況が続くとなると、今後の調査に影響があるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年は沖縄が日本に復帰して50年の節目を迎える。復帰後も変わらない沖縄の米軍基地の重圧と構造的差別の現実を前に、「復帰」の意味を奄美・沖縄から問い直す必要がある。今後は以下の3点について調査分析を行っていきたい。第一に、1960年代の歴史実証研究である。これまで行ってきた研究では、青年団機関誌の発刊時期の関係で主に1960年前後までを対象としてきたが、60年以降1972年までの分析が不十分である。そのため、60年代の復帰運動に関与した中頭郡の青年団OBへの聞き取りが急務である。また全軍労、教職員会の運動も視野に入れながら、復帰運動を牽引した若者世代に焦点を当てて資料と証言を収集する。 第二に、移民青年隊の調査研究である。占領期の青年運動から生まれた産業開発青年隊は、青年の労働問題を解決するために南米へ青年を送出する事業であった。その多くの青年が米軍基地のある中頭郡出身者であり、もう一つの復帰運動の系譜を青年隊に見ることができる。移民先であるブラジル、アルゼンチン、ボリビアの青年隊および女子青年隊の証言を記録することも急がれる。 第三に、奄美・宮古・八重山の青年と沖縄の関係に関する研究である。占領期の島嶼館移動がどのような人脈によってなされていたのか、集住地域と同郷組織の形成についての分析を行う。
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Causes of Carryover |
本研究は、占領期に青年団運動に携わった高齢の方々への聞き取り調査を主軸に据えているため、コロナ禍によって調査地への移動と対面調査が一度しか実施できなかった。また調査を依頼しても、同居するご家族から感染の懸念が示され調査を辞退される方が多かったのも、調査が複数実施できなかった主な要因である。奄美についても同様であり、高齢者対象の対面調査は、すべて実施できていない。コロナ収束後にあらためて訪問し調査が実施できるよう、その調査計画と準備は整えてある。 もう一つの聞き取り対象である青年隊調査は、南米におけるコロナ禍の感染拡大により渡航が不可能となった。次年度の渡航費用および調査費として有効に活用するため、繰越す予定である。
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Research Products
(1 results)