2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K02539
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山城 千秋 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (10346744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
農中 至 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (50631892)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 青年団 / 復帰運動 / 奄美 / 沖縄 / 産業開発青年隊 / 米軍基地 / 南米移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度もコロナ禍により、沖縄、奄美、南米への渡航自粛と対面調査の制限を大きく受けたものの、以下のとおり研究成果を得ることができた。 第一に、研究成果の発表である。口頭発表では、まず国際島嶼教育研究センター第212回研究会(7月12日)において「占領期奄美・沖縄の青年団」と題して農中が報告した。本報告では占領期の奄美・沖縄の青年団の歴史を紐解き、占領期の奄美・沖縄の実態を考察した。その際、奄美・沖縄の青年団によって発行された機関誌の比較検討を通じて、占領期奄美・沖縄の青年団組織の独自の歩みを示した。山城は日本社会教育学会第68回研究大会(9月10日)において「米軍占領下沖縄の文化政策と民俗芸能」を発表した。本発表では土地接収にはじまり島ぐるみ闘争から復帰運動へと展開する1950年代を対象に、その背景および要因となる沖縄戦の経験、米軍基地の存在、占領体制への批判という視点から、青年会の民俗芸能の復興と展開、そして青年会活動から広がった復帰運動への進展をとらえる分析をおこなった。論文では、山城・農中「占領下奄美・沖縄の青年団と祖国復帰の論理の背景」(『東アジア社会教育研究』第26号)、山城「米軍占領下沖縄における産業開発青年隊運動と南米移民」(『熊本大学教育学部紀要』第70号)などがある。 第二に、1957年から沖縄産業開発青年隊でブラジルに渡った「移民青年隊」の個人史調査と青年隊運動の史料調査である。コロナ禍の状況をみながら対面による調査を実施し、女子青年隊を含む16人の隊員から貴重な証言を得ることができた。また、青年隊の着伯後のブラジル社会の状況を知るために、邦字紙の調査を行った。サンパウロでは、その当時『パウリスタ新聞』『サンパウロ新聞』『日伯毎日新聞』の三紙が日刊紙として発刊されており、ブラジル日本移民資料館・図書館において1957年から1964年の新聞調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の調査対象者は1950年代から60年代に青年団運動を経験した方で、現在80代後半から90代の方々である。コロナ禍がもっとも厳しかった沖縄での調査は、当事者にお会いすることが難しく、またこの間に鬼籍に入る方も少なくなく、対面調査の機会さえ奪われた状況にある。 奄美群島においても、島の医療の脆弱性より、訪問が難しい状況にあり、本年度は渡航することも叶わなかった。南米での調査も同様である。コロナ禍で研究が滞ることは避けたいものの、対象者が高齢のため調査の実現が難しい。引き続き計画を次年度へ先送りし、実現可能性を探りたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年は沖縄の祖国復帰50年であり、改めて復帰運動と復帰について再考する機会が多々ある。こうした数ある機会をとらえつつ、青年団の視点から60年代後半から70年代の運動を資料と証言によって実証研究を進める。青年団OBへの聞き取り調査は沖縄島に限らず、奄美群島、宮古・八重山にも範囲を広げていく。 また、1953年に復帰を果たした奄美は、復帰後の研究が沖縄に比較して蓄積が少ないと思われる。沖縄に在留した奄美の人々の問題や復帰した奄美と占領下の沖縄の関係、さらに鹿児島県とのつながりについて、青年の視点から再検討する。 本年度のブラジル移民青年隊の聞き取りのまとめを行い、個人史分析を通して移民青年隊の実像を明らかにする。状況次第では、ブラジルでの継続調査と本年度実施できなかったボリビア、アルゼンチンの移民青年隊の個人史調査を実施する。 奄美・沖縄の青年団の機関誌を復刻する企画の実現をめざす。
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Causes of Carryover |
本年度に計画をしていた沖縄・奄美での調査がコロナ禍により渡航自粛のため、ほぼ実施できなかったため。また、南米の移民青年隊調査においても、ブラジルでの調査は実施できたものの、ボリビアおよびアルゼンチンでの調査がコロナ禍によりできなかったため、繰越せざるを得なかった。調査対象者が1960年代に青年運動を担った方々のため、オンライン調査への対応も難しい。本年度の対面調査の計画を来年度に実施するため、繰越を希望する。
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Research Products
(5 results)