2020 Fiscal Year Research-status Report
韓国・農村地域教育共同体の形成と社会教育の役割ー「公論の場」創造への道程
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20K02542
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Research Institution | Hokkaido Bunkyo University |
Principal Investigator |
吉岡 亜希子 北海道文教大学, 人間科学部, 准教授 (90827536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若原 幸範 聖学院大学, 政治経済学部, 准教授 (80609959)
阿知良 洋平 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 講師 (00754722)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 農村教育共同体 / 地域づくり / 代案学校 / 公立小学校の教育改革 / 若い協業農場 / 公論の場 / 韓国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、持続可能な地域づくりと社会教育の在り方を先進的な取り組みを行っている韓国・農村地域教育共同体の事例調査から明らかにするものである。初年度である令和2年度は、新型コロナウイルスの影響で、韓国調査を実施することが不可能だった。そのため対象地域においてこれまで行ってきた複数回の調査をまとめ、基礎データを作成することとした。対象とする韓国忠清南道洪城郡洪東面は、1958年にはじまった代案学校の教育を基盤としながら、持続可能な地域づくりを展開している。2009年~2010年にかけて洪東面の共同調査に参加し、教育再生が地域再生へとつながることを明らかにした。当該調査を契機に日韓の研究者、実践者の継続的な研究交流が行われてきた。こうした中、洪東面が農村教育共同体としての新しい段階を迎えていることが明らかとなり、2019年に改めて共同調査を行った。2009年~2010年の調査と10年後の2019年に行った調査のデータを比較した結果、以下の3つの変化を確認することができた。第一に変化が容易ではないと考えられてきた公立小学校の教育改革が進んでいた。第二に若者の定住のための新しい組織「若い協業農場」が機能していた。第三に地域住民が地域の未来について議論する場として「マウル(村)学会」が創出されていた。また、こうした教育共同体としての変化と並行して、同規模の農村とは異なる人口構成へと変容しており、学童期の子どもの増加が顕著となっていることも明らかになった。令和2年度の本科研の成果は、学会自由報告(2本)と紀要論文(1本)にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は新型コロナウイルスの影響で当初予定していた韓国での共同調査を実施できなかったため、進捗状況はやや遅れているとした。だが、オンラインによる研究会の開催等で、2009年~2010年調査と2019年調査の詳細な比較検討を行い、本研究の目的である①代案学校(韓国・オルタナティブスクール)の教育を基盤にこれまで困難であった学校種を越えた連携のあり方の解明、②都市部から農村の代案学校に入学した若者が地域で定住を果たすための条件、③住民による主体的で対話的な学びの場が展開するための環境醸成にかかわる教育実践のあり方の把握にかかわって前進があった。研究成果は、日本地域創生学会と日本社会教育学会の自由報告として、また、『北海道文教大学論集』第22号において、「韓国農村地域における教育共同体の創造―代案学校を核に深化した教育実践の10年間の変化に注目してー」というテーマでまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、新型コロナウイルスの状況にもよるが、韓国調査を中心に研究を推進する。現地調査では、保育所(私立)、幼稚園(公立)、小学校(公立)、中学校(公立)、高校(私立・代案学校)、専攻科(私立・代案学校の2年制専攻科)において、1、学校段階間を越えた教員の「教育ネットワーク」の組織概要、2、学校段階間を越えた保護者の「学習ネットワーク」事例:団体名「学父母の才能寄付」等、3、保護者と地域住民の学習組織、4、上記組織の形成過程を中心にインタビューと資料収集を行う。また、プルム学校専攻科の卒業生と教員が設立した農と学びを結ぶ「若い協業農場」の実践概要と学習構造について明らかにする。新型コロナウイルスの影響により調査が困難となった場合は、オンライン等による日韓研究者・実践者による研究会、交流会の実施を検討し、研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、当該年度に予定していた韓国での現地調査を実施できなかったため使用額に差が生じた。令和3年度はコロナウイルスの状況をみながら令和2年度に実施できなかった調査を含めて現地でのインタビューと資料収集を進めていきたい。状況によっては韓国側の研究者、実践者とのオンライン研究会を実施し研究を進めていく。
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Research Products
(3 results)