2021 Fiscal Year Research-status Report
韓国・農村地域教育共同体の形成と社会教育の役割ー「公論の場」創造への道程
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20K02542
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Research Institution | Hokkaido Bunkyo University |
Principal Investigator |
吉岡 亜希子 北海道文教大学, 人間科学部, 准教授 (90827536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若原 幸範 聖学院大学, 政治経済学部, 准教授 (80609959)
阿知良 洋平 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (00754722)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 農村教育共同体 / 持続可能な地域づくり / 代案学校 / 地域学会 / 公論の場 / 出版書籍 / 韓国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、持続可能な地域づくりと社会教育の在り方を先進的な取り組みを行っている韓国・農村地域教育共同体の事例調査から明らかにするものである。初年度である令和2年度は、新型コロナウイルスの影響で、韓国調査を実施することが不可能だったため対象地域においてこれまで行ってきた複数回の調査をまとめ、基礎データを作成することとした。2009年~2010年の共同調査と10年後の2019年に行った共同調査のデータを比較した結果、以下の3つの変化を確認することができた。第一に変化が容易ではないと考えられてきた公立小学校の教育改革が進んでいた。第二に若者の定住のための新しい組織「若い協業農場」が機能していた。第三に地域住民が地域の未来について議論する場として「マウル(村)学会」が創出されていた。 令和3年度は、韓国の農村において持続可能な地域づくりを目指した住民の学び合いの場・公論の場として組織された「マウル(村)学会」の出版書籍に着目し、住民の学びの内実を明らかにすることを試みた。「マウル(村)学会」創立後の2017年から2021年に刊行された7冊の書籍を対象に整理を試みた。その結果、農村で暮らすこと、農民とは、農業とは、教育とは、土地は誰のものか、農村文化といった概念そのものを問い返し、住民同士の議論を触発する内容で構成されていることが分かった。令和3年度の本科研の成果は、学会自由報告(1本)、紀要論文(1本)として報告、まとめを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響で予定していた韓国での共同調査を見送ることとなったため、進捗状況はやや遅れているとした。令和3年度は、住民が地域の未来について議論する場として創出された「マウル(村)学会」の分析を進めることができた。2017年から2021年に同学会から刊行された7冊の出版書籍を対象に整理を試みた。郵送により韓国から出版書籍を取り寄せ仮訳を行った。また、「マウル(村)学会」事務局担当者を対象にオンラインで書籍の内容にかかわるインタビューを実施した。その結果、住民が農村で暮らすこと、農民、農業、教育、土地、農村文化といった概念そのものを問い返し、住民同士の議論を触発する内容で出版書籍が構成されていることが分かった。この他、研究の現段階の到達点と今後の研究推進方策を検討するための研究会を開催した。 研究成果は、日本社会教育学会の自由報告として、また、『北海道文教大学論集』第23号において、「韓国農村地域における住民の学びと発信―マウル(村)学会の出版書籍に注目して―」というテーマでまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、韓国調査を中心に以下の研究を推進する。保育施設・学校における保護者、地域住民、教師のネットワーク組織の形成過程と学習内容の現地調査、各ネットワーク組織における学習主体別の自己教育主体形成過程の分析(保護者、住民、教師、子ども)。若者定住支援組織「若い協業農場」の展開過程と学習内容の現地調査、学習主体別の自己教育主体形成過程の分析(卒業生、元教師)。協同組合による図書館と公論の場「マウル(村)学会」の形成過程と学習内容の現地調査、学習主体別の自己教育主体形成過程の分析(卒業生、住民)。上記組織の形成過程の解明に向け、インタビューと資料収集を行う。まとめに向けた日韓の共同研究会の開催、学会報告と報告書の作成、出版を進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、当該年度に予定していた韓国での現地調査を実施できたかったため使用額に差が生じた。令和4年度はこれまで実施できなかった韓国でのインタビューと資料収集等の現地調査を行う予定である。
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Research Products
(2 results)