2020 Fiscal Year Research-status Report
独立移行期仏語圏西アフリカの教育変革―内外的「分断」をめぐる視点からの政策分析―
Project/Area Number |
20K02617
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷口 利律 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (20557318)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アフリカ教育史 / フランス植民地 / 植民地教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、1960年代前後の独立移行期の西アフリカを対象に、植民地期に仏領西アフリカと宗主国フランスとを「外的」に分断する役割を果たした植民地教育がいかに改革され、またその改革によってどのような「内的」分断がアフリカ諸国で生じたのかを明らかにする。 初年度である2020年度には、基礎的情報としての植民地教育に関する情報収集を行い、1920年代から1930年代に取り入れられた、教育の現地への「適応」を試みた植民地教育の内容分析を行った。 仏領西アフリカで大衆教育を担った村落学校のカリキュラムから、1)道徳教育とされる精神面の改変を教科横断的に実現しようとし、その最たるツールとしてフランス語教育を位置付けていた点、2)フランス語の習得というよりは、植民地行政側の意図をある程度理解できる主要産業従事者の育成が試みられていた点、3)想像力を育成できるような内容や抽象的な概念が、学習内容の中から排除されていた点が明らかになった。また、使用された教科書に関しては、写実的かつ簡素な記載内容であり、文章中に登場する「白人」も、仏領西アフリカに滞在する行政官等のヨーロッパ人という、植民地内で限定的に得られる情報のみでフランス人像が組み立てられていた。 同時期には、フランス本国で植民地官僚の養成を行ったパリの植民地学校のカリキュラムにおいても、植民地の文化や習慣に関する内容が取り入れられた。しかし、その内容と現地で教えられた内容には乖離があり、ヨーロッパ人の分析する「アフリカ」という独特の概念的構築物を植民地行政官の間に生み出した可能性がある。 現地への「適応」を目指した仏領西アフリカの植民地教育や、「現地」の状況を反映した植民地学校での教育は、仏領西アフリカ内もしくは仏領西アフリカ関係者間のみで完結する、非常に閉鎖的で隔離主義的な、ある種「分断的」な教育であり、独立移行期へと至る系譜が垣間見えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本調査年度では、フランスおよびセネガルでの文献調査を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大のため、渡航を中止した。しかし、資料の収集方法をオンラインや、国外図書館からの取り寄せへと変更し、当初予定していた資料はおおむね収集でき、当初計画していた通りの研究分析がた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、2020年度に収集することができなかった資料に関し、オンライン上または現地からの現物の取り寄せでの収集を試みる。2021年度には、1960年代前後の教育改革について詳細に分析し、アフリカ諸国内での「分断」された教育状況に関して分析する。
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Causes of Carryover |
2020年度には、フランスおよびセネガルでの文献調査を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大のため、渡航を中止した。このため、次年度使用額欄に記載された金額が発生した。2021年度には、資料の収集方法を全面的に変更し、オンラインと国内外の図書館からの取り寄せの方法を取り、研究を進める。
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