2021 Fiscal Year Research-status Report
独立移行期仏語圏西アフリカの教育変革―内外的「分断」をめぐる視点からの政策分析―
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20K02617
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷口 利律 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, その他(招聘研究員) (20557318)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アフリカ教育史 / フランス植民地 / 植民地教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究では、西アフリカ諸国がフランスから独立した1960年までの教育改革を中心に分析を行った。第二次世界大戦後の仏領西アフリカでは大規模な教育改革がなされた。初等教育に関しては、仏領西アフリカ固有の学校区分が撤廃され、また、旧来フランス本国でのみ進学可能であった高等教育に関しては、セネガルに大学を創設することで、高等教育をより享受しやすい環境が整備された。これらの改革によって、植民地内での初等教育の地域間格差や、宗主国と植民地との教育格差を緩和することが試みられた。しかしながら、こうした改革は、一定程度の高度な教育を受けることができた都市部の住民層に対しては、より質の高い教育を提供することを可能にしたが、初等教育への就学も困難である村落部の住民層に対しては、教育環境の抜本的な改善は繋がらず、村落部での就学率は依然として低迷していた。 このような教育格差に起因する「分断」ともいえる状況を内包しつつ、西アフリカ諸国は独立に至った。独立後の1960年代初頭には、アディスアベバ会議やタナナリブ会議といった国際会議が開催され、アフリカの教育状況の改善が議論された。これらの会議では、教育の脱植民地化ともいえる「アフリカ化」という文言によって、各地域の文化やニーズを教育に反映させ、アフリカ域内の教育格差の解消を試みているものの、旧フランス領の西アフリカ地域でそうした取り組みは進まなかった。子どもたちの母語である現地の言語を教育に導入したのも1970年代後半であり、同地域での教育格差は、明確な解消の方策が立てられないまま、独立後も引き継がれていたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染状況の拡大に伴い、当初文献収集を予定していた、フランスおよびセネガルへ渡航することができなかった。そのため、研究分析の対象である一部の資料を収集することができず、研究に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
海外への渡航が困難な状況にあるため、フランスの国立図書館やパリ、ソルボンヌ大学の図書館等から資料の取り寄せを試みる。また、ウェブ上で収集可能な統計データを探し、入手できた資料の種別や量によって、研究の範囲や焦点を変更する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、海外での資料収集を行うことができず、当初海外渡航費用として計上した経費を使用しないまま次年度へ持ち越すこととなった。今後、渡航が可能になることを見越し、渡航費用として次年度の予算に繰り越す。
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