2022 Fiscal Year Research-status Report
独立移行期仏語圏西アフリカの教育変革―内外的「分断」をめぐる視点からの政策分析―
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20K02617
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷口 利律 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, その他(招聘研究員) (20557318)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アフリカ教育史 / フランス植民地 / 植民地教育 / 西アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究では、1960年代の教育改革の内容面に焦点を当てた。フランス植民地期の遺制である教育制度と独立後のアフリカ諸国の目指す教育という、いわば、教育をめぐって「分断」されたともいえる状況について、どのようにして解消が目指されたかについての検討を行った。特に、教育の「アフリカ化」が、西アフリカの教育改革や国際教育支援の中でどのように捉えられ、また、「アフリカ化」のためにどのような施策が講じられたのかについて検討した。
多くのアフリカ諸国が独立した1960年代は、アフリカにおける教育の普及と改革に向けた国際的な気運が高まりを見せた時期でもある。その契機となったのが、ユネスコが開催したアディスアベバ会議とタナナリブ会議である。両会議では、教育の具体的な数値目標が設定されるとともに、教育内容をアフリカの社会文化に根差したものにするという、教育の「アフリカ化」が提唱された。しかしながら、西アフリカにおける教育援助の大部分は旧宗主国であるフランスとの間に結ばれた二国間協定に基づく一方、フランスが実施した教育援助の実施内容は、教育の「アフリカ化」からは程遠いものであった。 教育をアフリカの社会・文化に適応させるという「アフリカ化」の理念は、植民地が独立をなし得たからこそ生まれた新たな目標であった反面、独立直後という過渡期ならではの政治的パフォーマンスが先行した結果生み出された概念である可能性もある。この場合の「アフリカ化」が、はたして真にアフリカの人々から求められるものであったのかについては検討の余地がある。 また、旧宗主国フランスは教育援助に際して「アフリカ化」を尊重する姿勢をとりしつつも、実態をともなった「アフリカ化」には着手しておらず、教育をめぐるフランスと旧植民地である西アフリカ諸国の関係性は、独立後も大きく変化しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症の影響から、当初予定していた海外調査先との調整がつかず、実地調査を行うことができなかった。このため、海外図書館から可能な限り文献を取り寄せ研究を遂行した。しかし、当初の研究計画からはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航に関する規制が緩和されたことから、当初の研究計画に則り、2023年度には現地調査を実施し、文献や資料の収集にあたる。特に、独立後の西アフリカ諸国における教育格差をめぐる文献・資料を中心に収集、整理し、本研究のまとめに向けて検討を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
感染症の影響で、当初、海外渡航費用として計上していた予算が使用できず、次年度使用額が生じた。渡航規制が緩和されたため、次年度に海外での調査を予定しており、渡航費として使用する予定である。
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