2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of the musicking practice by employing distance education system
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20K02841
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Research Institution | Mimasaka Junior College |
Principal Investigator |
壽谷 静香 美作大学短期大学部, その他部局等, 講師 (00853467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安久津 太一 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (00758815)
ゴードン リチャード 星槎大学, 共生科学部, 教授 (00869422)
天野 一哉 星槎大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10600364)
有元 典文 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (30255195)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ミュージッキング / 遠隔 / コミュニティ / 参加型アクションリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、Christopher Smallが提唱した「ミュージッキング」の哲学を遠隔支援下で実践し、特に過疎地域をテレビ会議で繋ぎ、音楽的コミュニティの創生を目指すものである。本研究では、Smallが提唱した、音楽が「作品」ではなく、音楽すること、すなわち音楽する行為そのものであり、それは演奏することでも、聴くことでも、作曲することでも、踊ることでも良い、という方向を具現化し、実践的研究として検証を重ねてきた。本研究では、特にテレビ会議を補完的に活用しミュージッキングを実践することで、より広い世代や、へき地を含む遠隔地域の音楽の関わり合いを促進することを目指してきた。若い世代と高齢者、音楽経験や知識・技能も異なる参加者の関わり合いの促進に、遠隔支援下でのミュージッキング哲学の実践が、どのように有効・有用であったか、ナラティヴの構成を通じて、実践の開発過程を随時評価してきた。 研究業績としては、複数の実践を試行し、それらを事例研究として検証することに努めてきた。例えば、国内学会で研究者等が岡山県北、北海道、東京の3地点をつないで各地から配信し、音楽演奏も含めたミュージッキングのワークショップを実践した。参加型アクションリサーチを枠組みに、遠隔支援を活用したミュージッキングの実践的モデル開発と、ミュージッキングを通じて音楽のコミュニティの創生がどのように可能になったかを明らかにする内容であった。これらのモデルが、遠隔支援を活用することで、へき地や過疎地の音楽コミュニティの深化や拡張にどのように影響を与え得るか、研究実践者等が協働して検証作業を行い、実践的モデルの精度を高め、論文等で検証を進めることができた。特に2022年度は、クラシック音楽や伝統音楽という音楽のジャンルを超えて、ロックや即興音楽、音楽づくりも含め、あらゆるジャンルの音楽に照準をあて、実践を拡大することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主眼の一つが、「テレビ会議を補完的に活用し、ミュージッキングを実践することで、より広い世代や遠隔地域の音楽の関わり合いを促進する」ことであったが、2022年度は、コロナ禍の影響を受け、遠隔でミュージッキングを実践する機会が増えたこともあり、研究は当初の予定よりも進展することができた。特にへき地高を含む遠隔地域と東京のライブハウスを繋ぎ、ロックとクラシックが同期発火するような実践にも取り組むことができた。またへき地校同士のつながりを創出することもできた。これらの実践の内容を、へき地教育や学校教育、音楽教育に関する論文や学会発表でも積極的に発信することができた。遠隔を活用することで、より広い地域及び音楽のジャンルに照準を当てることができた点は、大きな意義となった、 あわせて遠隔教育システムを活用する側面でも、研究の進展が見られた、具体的には、一つのメイン会場と別な会場をスカイプでつなぎつつ、メイン会場と複数の地点をズームで繋いで音楽の実践をする、スカイプとズームを活用した多重接続にも成功した。音楽演奏のみならず、身体表現や造形表現など、多彩な表現方法を組み合わせることで、遠隔演奏の困難をそれほど感じることなく、総合的、学際的なミュージッキングの特長を深化させることにつながったと考えられる。また困難をかかえる児童生徒の巻き込みに、多様な表現媒体や音楽のジャンルの組み合わせが有効・有用なことを概ね特定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、以下を検討している。一層多くの地域で、対象人数や異なる年齢の対象者も増やして、音楽経験や音楽の嗜好や興味関心、知識・技能も異なる参加者の関わり合い促進に、遠隔を併用したミュージッキング哲学の実践が、どのように有効・有用か、ナラティヴの構成を通じて、実践の開発過程を複眼的に評価する。評価もチームで行うことで、多面的、代替的な評価が行われることが期待されている。通信制高校の全国各地のフィールド、複数のへき地校同士に接続し、地点の拡張も視野に入れる。加えて、実践の質の向上をアクションリサーチとして深める。昨年度までの豊富な実践の中で残された課題の一つが、ミュージッキングに参加することを提供側が意図的に促してしまう場面があり、参加者の興味関心や、学びに向かう力に、必ずしも合致しない可能性が否定できない中で、全員参加を強調してしまったことが、共同研究者等の省察の中で共有された。主体的な関わりや音楽のコミュニティ形成がいかに喚起され、ミュージッッキングが、その関わり合いを支えているか、より掘り下げ、多角的に検証する。もう一点、今後展開していく予定でいる研究実践が、遠隔と対面のハイブリットで実践可能な音楽セッションの可能性を追求することである。オンラインでの同時演奏も含めて、また異なる集団同士の空間をつないで、ミュージッキングのコミュニティがいかに形成されるか、実践を試行しつつ、同時に検証を重ねる。国際的なフィールドも追加することで、多文化の文脈でミュージッキングを検証することもしていきたい。
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Causes of Carryover |
物品費及び旅費において、当初予定していた金額よりも若干低い金額で研究計画を履行することができたため。特に新型コロナウイルス感染症の煽りを受け、実践が中止や延期となったこと、あるいはオンライン開催となり、経費が不必要になった場面が複数あった。2023年度は、実践及び学会等での発表を中心に物品及び旅費を使用する予定でいる。
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