2023 Fiscal Year Research-status Report
大学教育環境で育まれるキャリア形成マインドが企業参入・適応過程にもたらす機能解明
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20K02956
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
小田部 貴子 九州産業大学, 基礎教育センター, 講師 (80567389)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | キャリア形成 / 働く目的 / 働く意味 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、職業人としての自律的キャリア形成に寄与しうる“大学生としてのキャリア”形成過程(ACC)、そこで育まれる実社会で機能するレベルのマインドセット(MCD)、及び継続的学習や自分創りの方法論・スキル(MSCD)の詳細を解明することである。令和4年度までの研究では大学生の文脈における「自律とは何か」について、そのマインドや行動の特徴を明らかにすべく模索してきた。令和5年度は、企業人(人事担当者)の意見を取り入れるために、勉強会を複数回実施して協議した結果、「働くとはどういうことか」に関いて抱くマインドセットが重要な役割を果たしている可能性があること、具体的には「自分なりの働く目的や意味を持っていることが、働くうえで”踏みとどまれる(離職するか否か、深く考えられるか否か)”の差異につながり、ひいては自律的キャリア形成」に寄与する」との仮説を得た。本仮説について究明するため、企業人・大学教職員・学生が参加する「働く意味・目的」に関する対話ワークショップとその前後における質問紙及びインタビュー調査を実施し、次の点を明らかにした。(1)現代の学生の考える働く意味には①「社会貢献意識」②「個人的能力の発揮」③「個人のワークライフバランス」の3因子が含まれる、(2)上記3因子のうち、一般的に③に対する意味付けが最も強いが、①または②への意味付けも強い学生は、そうでない学生と比較して、粘り強く(回避・逃避しない)、深く考える傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①コロナ禍を避けた調査を行いたいと考え,1年目より本調査を送らせてきたこと。②基準となる指標の尺度開発を試みたものの,指標として妥当な尺度に成らなかったこと。以上,2点により,当初の研究計画からは「やや遅れている」と判断した。ただし,申請時に見出していなかった問題点を明らかにし,予定していたよりも問題に踏み込んだ調査及び尺度開発に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
「働く目的や意味」について若年層がどのように考えるのか、またそれは何の影響を受けており、どのような社会を予測するのか、という問いは、自律的キャリア形成に資するマインドセットという観点においても、より広い視点でキャリア教育の在り方を問い直す意味でも、究明すべき重要な課題だ考えるに至った。従来のキャリア教育・支援が「学生一人ひとりの興味・適性・能力の育成に特化した」“個人モデル”に偏重しており、「組織・社会システムの成り立ちやその中での自分の果たすべき役割を一人ひとりが理解したうえで、社会と個人とが社会文化的な営みを積み重ね,組織と自己が共に成長していくという考えに基づき学び合う」“社会モデル”の視点が乏しいために、「働く目的や意味」に関する認識が十分に育っていないという実態があるのではないかとも考えられる。 そこで、最終年度となる令和6年度においては、引き続き、企業の人事担当者との協働しつつ、「働く目的や意味」に関するマインドセットがどのように育まれるのかについて、定性的・定量的な観点から解明することを目指す。
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Causes of Carryover |
令和6年度の使用額が生じた理由は、①コロナ禍による調査計画の全般的遅れによって調査が後ろ倒しになったこと、②研究計画の修正に基づき、前年度は定性的調査と研究者による予備調査に特化したために、量的調査に必要な委託費が発生しなかったことである。②では定性的研究に基づいた仮説検証を行ってきたが、令和6年にこの仮説を量的にも実証するための定量的調査(ウェブ調査)を実施したいと考えている。そのため、次年度使用額が生じている。
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