2020 Fiscal Year Research-status Report
The development of an outcome-based evaluation system for learning support centers in higher education institutions
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20K03112
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Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
石毛 弓 大手前大学, 建築&芸術学部, 教授 (50515327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
合田 美子 熊本大学, 教授システム学研究センター, 准教授 (00433706)
椿本 弥生 東京大学, 教養学部, 特任准教授 (40508397)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 学修支援 / 効果測定 / ラーニングアウトカム / 学修サポートセンター / 学習支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究における2020年度の研究内容およびその成果について記す。本研究の主旨は、高等教育機関における主として授業外学修への支援の効果測定方法を構築することである。教育機関に学修サポートセンター等の名称で設置される機関の活動は、来室者数など「数」を評価軸に用いることが多かった。この活動を、「質」の面からも評価することのできるフレームワークを用いて、具体的な評価手法により測定可能にすることが研究の主目的である。研究の開始年度は、①国内外の情報および文献資料収集、②フレームワークの再検討、③効果測定方法の初期段階の構築とその有効性の検証の3点を達成目標として掲げた。 ①については、国内外の文献収集を行い、その蓄積と整理を行った。②では、CilliersとHermanによるフレームワークが学修サポートセンターのパフォーマンスを測定するに際して適切であるかを検討した。その結果、基本的な枠組みとして妥当であり、本研究の進捗によってはフレームワークの再構築を再検討するという結論にいたった。③については、「進捗状況」の報告で詳しく述べるが、COVID-19の流行により修正を行った。主な内容は、非対面とくにオンラインによる学修支援の効果測定を研究内容に加えた点となる。 総括として、2020年度の研究計画は、目標を遂行するための基礎概念を検討・構築する点において進捗と意義があったといえる。検証面においては遅れがみられるが、これは非対面型学修支援の評価方法という新しいモデルを開発するためである。非対面型学修支援は、今後重要性を増していく分野であると考えられる。したがっていま非対面型学修支援の効果測定方法について研究することは重要であり、かつ社会的な需要に合致するといえる。なお本研究の一部は、2020年度より大手前大学交流文化研究所と研究協力を行うこととなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の2020年度の進捗状況を報告する。当該年度の研究計画は、①国内外の情報および文献資料収集、②フレームワークの再検討、③評価方法の初期段階の構築とその有効性の検証という3点の遂行だった。①については、国内外の文献資料を収集した。国内に関しては、学修サポートセンターへのアウトカムについて参考となる文献は多くはなかった。しかしこれは想定内であり、むしろ国内での研究が盛んではないからこそこのテーマを発展させるべきだとの考えが、当該研究チームにはある。国外については、英語圏の資料を中心に情報を蓄積しデータベース化している。②は、①の資料を元に検証を行い、基本モデルとして妥当であるという結論を得た。 ③についてだが、当初はアンケート項目やライティング評価の手法を開発し、それらをフレームワークに適合させるかたちで実行し、妥当性を検証すること等を予定していた。この点に遅れが生じている。原因は、COVID-19の感染拡大により高等教育機関の授業や学修支援が一部非対面化されたり中止されたことにある。研究代表者の環境を例に出すと、2020年度初は、学修サポートセンターが1か月以上閉室となった。その後、非対面型による学修支援を開始し、さらに対面型が制限付きで始められた。これらは当然予定外のことであり、学修サポートセンターの体制そのものを新たに組み立てなければならなかった。本研究では、理論の構築においても、その有効性の検証においても、実践を通したデータ収集が不可欠である。しかし研究対象としていたフィールド自体がその体制や手法の変更を余儀なくされたため、これにともない研究計画を大きく変更せざるをえなかった。現在はこの点をポジティブにとらえ、研究内容が対面型だけでなく非対面型学修支援を含む幅広いものとなるよう調整を行っている。そのため、当初の研究計画からは遅れが発生することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策について記述する。①国内外の情報および文献資料収集については、積極的に行っていく。とくに2020年度は、参加を予定していた学会が開催されないケースがあったため文献資料以外での情報収集が手薄になった面があった。2021年度の学会はオンラインでの開催が多くなると予測されるため、従来とは勝手が異なるが、最新のデータを入手するよう活動していく。②フレームワークの再検討は、必要に応じて検証する。 ③効果測定方法の初期段階の構築とその有効性の検証については、二つの方向からアプローチする。ひとつは、分野や科目を想定して検証する方法である。たとえばライティング能力の場合、フレームワークの項目それぞれについて検証方法を考案していくことになる。これは、いわば演繹的に検証方法を導き出すやり方だといえる。もうひとつは、学修サポートセンターのパフォーマンスを測定できる方法を個別に挙げていくやり方である。たとえばレベル1では、学修サポートへの事後アンケートを実施する。またレベル4では、レベル3の行動変容が「組織全体」としてプラスになったかどうかに着目する効果測定のチェックリストを作成することが考えられる。 2021年度の研究計画においては、これら二種類のやり方の一方に限定することは行わず、研究チームメンバーの専門分野やフィールドに応じて柔軟に検証方法を増やしていくことをめざす。そのうえで学修サポートセンターなどの場で実行・検証し、内容を精査していく。2021年度は、パフォーマンス効果の検証方法を複数作成し、フィードバックを元に修正して現場で使用することができるレベルまで質を高めることを目標とする。また検証方法は対面・非対面で手法が異なる場合があるため、それぞれについて研究する。非対面型の学修支援は、2020年度の状況を踏まえて研究計画を修正した結果必要となった新たな研究項目である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由と使用計画について記す。2020年度はCOVID-19が全世界に拡大した期間であり、教育分野でもさまざまな変更を余儀なくされた。これらのうち本研究の経費に関わる主要な点は、①学会・研究会の開催の変更、②授業・学習支援形態の変更である。①だが、本研究分野に関しては、日本国内ではなくアメリカ合衆国を中心とする英語圏での活動が比較的盛んであるといえる。そのため資料収集および情報交換を目的とした国際学会への参加を予定していたが、それらはすべて中止もしくはオンライン開催となった。さらに、対面での研究会も行われなかった。こういった事情のため、予定していた旅費の一部を次年度使用とした。また②であるが、本研究の成果となる効果測定方法の設計や検証にあたっては、協力者への人件費や謝礼を想定していた。しかし、上述同様COVID-19流行の問題により研究フィールドである学修支援体制そのものが変更されたため、研究計画に遅れが生じた。その結果、協力者に関する費用がほぼ発生しなかった。この点についても、予算を次年度使用として活用する予定である。
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