2021 Fiscal Year Research-status Report
健康に関する疑似科学的言説をもつ宣伝の特徴と浸透状況に関する研究
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20K03272
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加納 安彦 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (50252292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 伊織 愛知学院大学, 心身科学部, 准教授 (10568497)
石井 拓児 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (60345874)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 疑似科学 / 健康食品 / ヘルスリテラシー / 教科書分析 / テキストマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
健康や食品に関する疑似科学的な言説のうち、特にいわゆる「健康食品」の新聞広告を対象として、テキストマイニング分析によって明らかにする。さらに、宣伝を受け取る立場にある市民や医療従事者、学生がどのようにして人体や健康に関する知識や考え方を身につけてきているかを、初等中等教育課程の学習内容を対象として、教科横断的に検討する。 1)「健康食品」に関する新聞内容の分析:2年分の全国紙1紙と地方紙1紙の新聞掲載広告並びに折り込み広告のうち、「コラーゲン」、「グルコサミン」、「コンドロイチン」のいずれかを含有成分とする商品の広告を対象とした。該当する広告は、36商品、広告数339であり、広告回数の多かった2商品を対象として、KH coderを使用して分析した。この結果、タイトルなどに科学用語ではない語を使用したり、使用者の声などエビデンスレベルの低い内容をくり返し取りあげたりするほか、論理的というよりも情緒的な説明が特徴的であった。この成果はヘルスコミュニケーションウィーク広島(2021年10月)で発表した。 2)教育課程の分析:小学校、中学校、高等学校の理科、社会科、技術家庭、保健体育を中心にして、分析を行っている。共同研究者からの依頼によって、気候変動や環境問題に関する教育内容の分析もおこない、第80回日本教育学会(2021年8月)で発表した。 3)医療従事者への教育:理学療法士や鍼灸師などを対象としたセミナー(「臨床のための生理学講座」)を5回実施した。おもな内容は、ミネラルやビタミンについての栄養学的な基本知識とともに、それらを含有している栄養機能食品やいわゆる「健康食品」についての話題を提供した。関連して、視覚機能に関わる効能をとく食品注目して、エビデンスとされる文献内容を紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)「健康食品」に関する新聞内容の分析は、「研究実績」で記したように、「コラーゲン」、「グルコサミン」、「コンドロイチン」のいずれかを含有成分とする商品の広告の集計と分析を終え、この成果はヘルスコミュニケーションウィーク広島(2021年10月)で発表した。また、2021年4月から2022年3月までの地方紙1紙を対象に、「健康食品」に関する新聞掲載広告並びに折り込み広告を収集した。 2)教育課程の分析:共同研究者からの依頼によって、気候変動や環境問題に関する教育内容の分析も行い、第80回日本教育学会(2021年8月)で発表した。研究の進捗には影響したが、分析方法やまとめ方については、その手法を確認する機会となった。 3)医療従事者への教育:医療従事者への教育は、実施回数が予定よりも少なかったとはいえ、定期的に実施し好評を博した。講演内容はすべて録音し・録画している。文字起こしを順次進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を生かし、第3年度には以下のように研究を進める予定である。 1)宣伝内容の分析:コラーゲン食品以外の商品、例えば、酵素含有を謳った食品・サプリメント、ブルーベリーなどを含有する食品・サプリメントなどの広告を対象に、テキストマイニング分析用に集計するとともに、KH coderにより分析する。 2)教育課程の分析:第3年度に当たる2022年度から高校が新課程となり、教科書が更新される。これに伴い、新たに購入するとともに、改めて分析する予定である。特に、食物のタンパク質の消化・吸収、代謝とタンパク質の合成、さらには皮膚や軟骨などの構造を対象として分析を進める。それらの結果をもとに、小・中・高校の各科目での教育内容を比較し、それらが系統性が保たれているのか否かを検証する。 3)医療従事者への教育と教材の作成:「疑似科学入門」と題するセミナーを隔月で実施する予定である。2022年度は「ダイエット」食品などの対象となる糖質を中心として生化学的な基本知識とともに、疑似科学的な宣伝内容やダイエット法の影響を考える。さらに、これまでの講演内容を文字起こしし、医療従事者が利用できるテキストの作成をめざす。さらに、同様の内容をブログなどを通じて公開する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、出席予定であった学会が中止またはオンラインや紙上発表での実施になったため、旅費としての執行がなかったこと、専用パーソナルコンピューターを購入する予定であったが、適当な機種がなかったため見送ったことにある。第3年度では以下のように使用する予定である。 1)成果発表やさらなる情報収集の機会を得るため、国内学会への出席を増やす予定であり、既に2学会での発表と3学会への出席を予定している。 2)当初、初年度に購入予定であった専用パーソナルコンピューターを購入する。 3)「疑似科学入門」と題するセミナーの内容を文字起こしするための専用ソフトウェアの購入する。この他、研究成果を広く普及するために独自のWebサイトを設ける予定であり、そのために必要なソフトウェアの購入やサイト構築のための委託費を見込んでいる。
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