2023 Fiscal Year Research-status Report
物語接触による不合理信念の獲得過程の解明と反復接触を用いた克服手法の開発
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20K03297
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
小森 めぐみ 淑徳大学, 総合福祉学部, 准教授 (40706941)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 物語移入 / 誤った信念 / 態度変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2024年度は、海外学会での発表と論文出版、実験研究をそれぞれ1件ずつ実施した。学会発表は7月に香港で開催されたアジア社会心理学会でのポスター発表であり、先行研究をウェブサンプルで追試したものであった。先行研究では、物語に没入するほどその内容に一致する価値観(人間と動物の間の友情)に合致する態度が示されていたが、本研究ではその結果が再現されなかった。また、理解度を測るために内容に関するクイズを出題したが、正答率は非常に低かった。ただし、クイズに正答した者だけを分析しても、先行研究の結果は再現できなかった。この結果と別サンプルに対して実施した類似の研究を、淑徳大学紀要にて論文化した。 実験研究は、これまでウェブサンプルで行った実験で仮説に一致する結果が得られなかったことを踏まえ、大学生を対象にした教室での実験(非ウェブ実験)として実施した。参加者に提示する物語は海洋生物の危険について描かれたものであり、物語に没入するほど海洋生物の保護に対する態度がネガティブになると予想した。今回の研究では、物語内容に関するクイズに全員が正解したものの、仮説を支持する結果は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題では、物語によって生じた誤った知識獲得の修正方法について検討するものであるが、その前提となる物語による誤った知識の獲得が示せていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、物語移入研究に基づく複数の実験研究を行ってきたが、移入が進むほど態度変化が生じるという結果は得られておらず、研究課題の目的達成が困難な状況である。そこで、実験手続きについて以下の二点を見直す。 第一に、昨年度実施した海洋生物の危険性を描く物語は、全体として移入が十分に生じていなかったため、刺激を改善する。さらに、逆方向(海洋生物保護の必要性)のメッセージを含む物語も作成し、並行呈示の効果を検証する。 第二に、物語刺激のデザインを根本から改める。具体的には、物語全体で一つの知識や信念を仄めかす実験刺激ではなく、DahlstromやMarshが用いる、正誤判断を可能とする複数の命題を含む実験刺激をベースとした物語刺激を予備実験で作成する。彼らの刺激に含まれる知識項目は欧米のもの(たとえばアメリカの州都についての質問)であるため、日本人でも回答可能な形に修正し、予備調査を行って妥当性を検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍での研究の遅れをまだ取り戻すに至らず、次年度使用額が生じた。来年度は物語刺激の作り直しを行うため、予備調査やアウトソーシングの費用を計上することを予定している。また、国内での学会発表も予定している。
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