2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K03344
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
外山 紀子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80328038)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 共存モデル / 病気の理解 / 衛生教育 / 概念発達 / 素朴生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,次の3つの研究を行った。 (1) 病気に関する理解の発達を検討したこれまでの研究を,共存モデルにたって再検討し,著書にまとめた(外山, 2000)。病気だけでなく成長,生命あるものとないものの区別,死,遺伝,死後の世界に関する認識など,生命に関する現象のいくつかについて,共存モデルによる説明が妥当であることを議論した。また,乳幼児医学・心理学会第30回大会において,その成果の一部を大会長講演として発表した(外山, 2021)。さらに,共存モデルの医療実践への応用として,「医療におけるナラティブとエビデンス」をタイトルとする大会シンポジウムを企画した。 (2) 日本と中国の幼稚園・保育園を対象とした質問紙調査を実施し,食事場面を中心として衛生環境,病気の予防に関する園側の配慮を検討した。また,その配慮が園環境のなかでどのように具体化されているかについても検討を行った。その結果を,日本と中国における身体観,子ども観,保育観との関連で議論し,投稿論文にまとめた。 (3) 保育園食事場面の分析:今年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,保育施設および家庭での観察を実施することができなかった。そこで,2019年度に日本の保育園の3~5歳児の食事の準備・摂食場面を観察したデータを,衛生・感染予防に関するやりとりについて分析を行った。保育者は感染予防のための手洗いや着替え,食事マナーなどについて簡単な説明しか行わないものの,幼児は行動レベルにおいてその意味を理解していることが示唆された。なお,当初は中国およびオーストラリアの保育施設での観察調査を計画していたが,やはり新型コロナウイルス感染症の感染拡大により実施することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
摂食,病気,成長と老化,死等の生物現象に関する理解の発達を,日本・中国・オーストラリアの子どもに対する実験により検討する予定を組んでいたが,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,保育施設への立ち入り,渡航ができなかったことから,実施を見送らざるを得なかった。観察についても同様の理由により,新規にデータを収集できなかったことから,既に取得済みのデータを,新たな視点で分析する等,研究方法を工夫するなどして検討を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
生物現象に関する理解を検討する実験については,新型コロナウイルス感染症の感染拡大がある程度収束したところで速やかに着手する予定である。幼児および児童に対する実験研究は個別に対面で実施する必要があることから,感染収束を待っての実施とならざるを得ないものの,成人に対する調査はネット調査などを利用して実施する準備を進めたい。 観察研究についても,中国・オーストラリアでのデータ収集は感染収束を待ってからの実施となるが,日本でのデータ収集は対象者の方にカメラなどの撮影機材をお渡しして実施するなど,研究方法を工夫して実施したい。また,感染症の感染拡大により,感染予防や衛生について社会的に与えられる情報には大きな変化があると考えられるため,既に収集してある観察データと新規に収集するデータの比較を中心として分析を実施したい。
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Causes of Carryover |
オーストラリア,中国に渡航しての調査,国際学会での発表を予定していたが,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,調査については延期,国際学会については不参加とせざるを得なかったため。
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Research Products
(3 results)