2022 Fiscal Year Research-status Report
The experiences of ambiguous loss and resilience among people who have been supporting the residents in the aftermath of the nuclear accident
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20K03393
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
瀬藤 乃理子 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (70273795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 豊 筑波大学, 働く人への心理支援開発研究センター, 主幹研究員 (60173788)
前田 正治 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (60248408)
佐藤 秀樹 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 助教 (30849097)
小林 智之 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (60835487)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 原発事故 / 自治体職員 / メンタルヘルス / あいまいな喪失 / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
原発事故後にすべての町村が強制避難を余儀なくされた福島県双葉郡の行政職員に行ったアンケート調査の解析をすすめた。 行政職員376名(5町村)の解析結果では、震災前から勤務を継続している職員は、わずか36%で、ほとんどの町村で、休職・退職による職員の入れ替わりが顕著であった。メンタルヘルスの問題(K6≧13)には、「若い年代」「男性」「震災時に福島県内居住」「震災時から行政職員として勤務」「転居回数の多さ」が関連し(いずれもp<0.001)、原発事故から10年以上経過した現在も、震災当時の影響が大きいことが示唆された。また、「何とかなるという楽観性」「役立つ考え方や信念、価値観の獲得」「自己効力感」は、メンタルヘルスの問題と負の相関であったことから、レジリエンスに寄与していると考えられた。中でも特に「楽観性」は、3分の1以上の職員が力になると回答していた。 また、全体としては、メンタルヘルスの問題の高リスク者の割合は15%、中リスク者の割合は33%にのぼった。双葉郡では、震災以降も追い打ちをかけるように、台風、地震、新型コロナウイルスの対応に追われており、複合的なストレス要因を考慮する必要がある。一方、インタビュー調査の結果と合わせると、必ずしもメンタルヘルスの得点だけを問題視するのではなく、「上司や同僚のサポート」「助け合い」「組織としての職員への支援体制」が、働く意欲を向上させ、反対に「コミュニケーション不足」が、働く意欲を低下させており、組織的な支援が必要と考えられた 調査結果に基づき、原発事故後の支援者支援モデルを暫定的に作成し、それに基づき自治体支援を実施した。メンタルヘルス支援と組織づくりを中心に、各自治体に改善案を提案した。また、各町村ごとの職員研修会や、8町村合同での研修会を定期開催した。それにより、組織的に取り組む自治体が増えてきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
原発事故後の相次ぐ災害のため、各自治体が多忙を極めたこともあり、調査・回収が全体に遅れたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、8町村全部のアンケート回収が終わり、総計775名の協力が得られた。そのため、今後、全町村合わせて解析を行う。特に、メンタルヘルスの関連要因、喪失・あいまいな喪失体験が及ぼす心理的影響、レジリエンス要因について、より詳細な分析を行う予定である。それをもとに、新たな知見を加えた形で、原発事故後の支援者支援モデルを完成させる。
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Causes of Carryover |
調査が全体に遅れたため、論文化が未着手となった。今後、新たなデータを加えて解析を進め、それをもとに、論文化と成果報告を行う。
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