2023 Fiscal Year Research-status Report
Clinical psychological intervention in the preliminary stage of Lifestyle-related Diseases contributes to the reduction of psychobiological stress response.
Project/Area Number |
20K03430
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
矢島 潤平 別府大学, 文学部, 教授 (30342421)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生活習慣病予備軍 / ストレス実験 / 介入実戦研究 / TSST / 心理生物学的ストレス反応 / 回復期 / ロールプレイ / 援助要請スキル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,生活習慣病予備軍(不適切な生活習慣を送っている個人)を対象に臨床心理学的介入による生活習慣の改善と心理生物学的ストレス反応の変化との関連性を,フィールド調査,実験室実験及び介入研究にて検証することを目的としている。本年度は,実験室でのストレス実験と介入研究を実施したので下記に報告する。 (ストレス実験)大学生を対象に3DSS(睡眠に関する質問紙)とGHQ-12(健康状態)等の質問紙を実施して,生活習慣病予備軍と健常群を抽出し実験に参加してもらった。ストレス実験は,TSST(10分間の順応期,5分間のスピーチ課題と5分間の暗算課題,30分間の回復期)にて実施し,ストレス状態質問紙及び心拍等の生理指標を測定した。回復期において,健常群に比べて生活習慣病予備軍は,心拍数やLF/HFの順応期の水準に戻る回復性が遅かった。すなわち,望ましい生活習慣を実施していない個人は,ストレス状態からの回復が遅くストレス反応を継続していることを明らかにした。これらの知見は,個人の生活習慣の実施状況が急性ストレス条件下での心拍の反応パターンに影響することを示唆している。 (介入研究)大学生を対象に日常生活場面での援助要請スキルの向上を目的とした介入プログラム(成功場面や失敗場面のロールプレイ,フィードバック等を行う)を実施し,介入前後及び3ヶ月後のフォローアップの変化を検証した。介入後に援助要請スキルは上昇し,心理的ストレス反応は下降した。しかしながら3ヶ月後のフォローアップでは,いずれの指標も介入前の水準に戻った。今回の介入プログラムは,一時的に生活習慣の改善は認められるものの持続的な効果は示されなかった。次年度以降には,複数回の介入プログラムを提供するなどして効果が持続するような工夫が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,2020年度から開始され,当初の計画では本年度が最終年度となり,研究は終了する予定であった。しかしながら,昨年度までの新型コロナウイルスの影響によって,ストレス実験がほとんど実施できず,介入実践研究を先行して実施した。そのため,実験室場面での生活習慣病予備軍の心理生物学的反応のデータが不足しているため,研究成果の終結には至らなかった。しかしながら,感染対策を踏まえたストレス実験のノウハウを得ることができたこと,終結宣言によって実験の制約が少なくなったこと,実験参加者の協力も得やすくなったことなどによってデータの収集も可能となってきた。そこで,研究期間の延長申請によって,次年度は実験室研究を中心に実施して,生活習慣病予備軍のストレス反応の特長を明確化できることが可能となる。 また,介入研究の成果の一部については,日本精神衛生学会等で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究スケジュールを延長して実施することとなる。特に実験室研究を中心にデータ収集を行う。令和6年度は,フィールド-実験統合研究に重点をおいて取り組むこととする。対象者については,令和2年度及び令和3年度に実施したフィールド調査(質問紙のみ)にて生活習慣病予備軍(不適切な生活習慣を送っている個人)と対照群の抽出はすでに終わっており,実験参加の内諾も得ており,実験スケジュールに従って実施する。進捗状況の項目で記載したとおり,随時実施することとする。実験手続きとしては,対象者に実験室に入室後10分間の順応期,ストレス課題10分(スピーチ課題と暗算課題),回復期30分にて行う。ストレス課題前後と回復期後に唾液採取と気分に関する質問紙を実施するとともに,実験中,心拍,HF成分及びLF/HFを連続測定しその変化を捉える。唾液を資料として,コルチゾールやfree-MHPGなどを定量化して主観的反応と生物学的反応の両面から検証を行うこととする。 介入実践研究については,対象者に,生活習慣病改善のための心理教育,2週間のセルフモニタリングを含めたホームワークの実施,フィールドバック面接を行う。介入前後で生活習慣,ストレスに関する質問紙調査を実施しその変化を捉える。 研究成果については,国内国外の学会にて適宜報告をおこなう。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響によって,実験室実験の実施に制限があったため,データ収集が難しかった。そのため,実験参加者に支払う予定であった謝金や実験で用いる生理指標を測定するための物品費を次年度に使用する。 また,学会での成果発表等を行うための旅費を計上していたが,同様の理由でオンラインでの開催が増えたため予算消化が少なかった。次年度は対面による開催も増えてきたので,成果発表の旅費として使用する。
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