2022 Fiscal Year Research-status Report
がんゲノム医療と遺伝性腫瘍に対する患者・医療者の心理的ストレスに関する研究
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20K03431
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
田辺 記子 (安藤記子) 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 遺伝カウンセラー (30586376)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遺伝カウンセリング / がん易罹患性症候群 / がんゲノムプロファイリング検査 / 二次的所見 / 心理的ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年6月~2022年6月までに、当院で保険診療として実施され、エキスパートパネル(EP)で検討されたがんゲノムプロファイリング(CGP)検査(①NCCオンコパネル:609症例、②FoundationOne CDx:557症例、③FoundationOne Liquid CDx:101症例)において、一塩基置換、短い欠失・挿入での生殖細胞系列所見について指摘があった(①では、がん易罹患性症候群が確定した/②および③では、疑われた)症例は、①20症例(3.3%)、②42症例(7.5%)、③2症例(1.0%)の計64症例であった。そのうち、がん易罹患性症候群に関する情報提供非同意の2症例、EP以前に遺伝カウンセリングを受診していた8症例を除いた54症例のうち、2023年2月末時点で遺伝医療部門受診があったのは25症例(46%)であり、がん易罹患性症候群が確定する検査であるNCCオンコパネルを受検していた患者は、がん易罹患性症候群疑いとなるFoundationOne CDx受検患者よりも、統計学的有意に遺伝医療を受診する頻度が高かった。すなわち、「疑い」よりも「確定」の方が遺伝医療受診への受診動機につながっていることがわかった。また、診療録の質的調査より遺伝医療未受診事由としては「子がいないのでメリットを感じない/子に相談してから考えたい」「治療を優先したい」「今は遺伝のことをはっきりさせたくない」ことが抽出された。これらから、検査結果直後ではなく、長期的に遺伝外来受診を保障する視点からの患者支援の重要性が示唆された。 上記調査と併せて、患者の心理的特徴を調査するための質問紙であるThe Multidimentional Impact of Cancer Risk Assessment(MICRA)の日本語版を作成し、日本語版の信頼性・妥当性評価のための調査を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始時のコロナ感染症流行の影響もあり、患者を調査対象者とした調査が予定よりも遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1の症例集積は順調であり、2022年度は学術集会での報告を実施した。引き続き、論文報告を行う予定である。 アンケート調査に対しては、鋭意対象者への調査参加呼びかけを行っており、本年中にはデータ解析・発表を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
2022年度において、研究実施および各種学術的情報収集(海外を含めた学術集会等の参加)を予定していたが、2020年冬季からのコロナ禍の影響や所属機関における海外渡航の禁止措置もあり、旅費使用が予定よりも大幅に少なくなっている。また、オンラインでの学術会議の普及により、現地参加なしでの情報収集を行っている。 物品購入に関しては、本年度に統計解析の本格的実施に伴い、各種備品等を整備するための使用を計画している。 人件費に関しても、直接雇用が難しい状況であった。
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