2022 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of an Experimental Paradigm for Conditioned Place Avoidance Learning in Planarians
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20K03502
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
田積 徹 文教大学, 人間科学部, 教授 (10410961)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プラナリア / 塩水 / 馴化学習 / 学習の表出 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目は、プラナリアへのCS呈示を確実に行うために明暗刺激を用いて、本実験を行なった。円形の皿の半分領域が暗、残り半分の領域が明の皿および蓋を用いて、ベースラインとして選好領域の滞在割合を測定した。翌日、統制群は水、実験群は2種類の塩分濃度の液体に30分間、暗い領域に閉じ込めて条件づけした後に、ベースラインと同じ皿を使用して選好領域の滞在割合を測定した。 その結果、統制群はテストでは明るい領域での滞在割合がベースラインでのそれよりも増加し、明るい領域への馴化を示した。一方、実験群では、暗い領域で呈示した条件づけ後のテストにおいて、塩水の濃度依存的に明るい領域での滞在割合がベースラインでのそれよりも増加せず、馴化も示されなかった。これらの結果は、塩水が呈示された暗い領域にプラナリアが留まることを示しており、塩水がプラナリアにとって嫌悪以外の特性を持つことを示唆している。 さらに、テストの前の条件づけを明るい領域で行なったこと以外、上記と同じ手続きで実験を行なったところ、上記の実験と同じ結果が得られた。 上記の各実験は2回行なわれて、いずれもリプリケートされた。したがって、これらの結果は、塩水はプラナリアにとって報酬でも嫌悪でもなく、これら以外の特性を持つことを示唆している。仮説として考えられることは、プラナリアにおいて、塩水が生理学的な効果や薬理学的な効果を引き起こし、馴化を表出しなかった可能性がある。しかしながら、塩水が脱馴化を引き起こす単なるトリガー刺激である可能性も考えられ、また、明暗を手掛りにした実験であることから、塩水がプラナリアの明暗弁別を障害させた可能性も考えられる。最終年となる2023年度は、上記の仮説の妥当性を示す実験を行なう必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は、塩水を用いてプラナリアが条件性忌避学習を獲得できることを示すことであった。この計画は、塩水がプラナリアにとって嫌悪刺激であることが前提となっている。しかしながら、3年目に行なった実験によって、塩水は嫌悪や報酬以外の特性を持つことが示唆された。このことから、当初の計画課題であった条件性忌避学習の獲得や消去、復位、さらに、条件性忌避学習の獲得に関与する神経伝達物質の同定のための実験は、これ以上遂行することができない。しかしながら、3年間取組んできた当初の研究課題によって得られた仮説とは異なる知見(塩水は嫌悪や報酬以外の特性を持つ)に基づいて、研究計画を変更することによって当初の計画よりも意味のある新しい発見が得られる可能性がある。 3年目に行なった実験において、統制群のプラナリアは明るい領域への馴化を示したが、塩水に晒された実験群では塩水濃度依存的に馴化を示さなかった。これらの結果は、プラナリアにおいて、塩水が生理学的な効果や薬理学的な効果を引き起こしていることを示唆している。最終年において、塩水が行動学的にどのような効果を引き起こしているのかについて、現在いくつかの仮説をすでに想定しており、それらの仮説を検討する新たな行動学的実験も計画している。このことから、当初の計画以上に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
円形の皿の半分領域が暗、残り半分の領域が明の皿および蓋を用いて、ベースラインとして選好領域の滞在割合を測定した。翌日、統制群は水、実験群は2種類の塩分濃度の液体に30分間、暗い領域に閉じ込めて呈示した後に、ベースラインと同じ皿を使用して選好領域の滞在割合を測定した。その結果、統制群はテストでは明るい領域での滞在割合がベースラインでのそれよりも増加し、明るい領域への馴化を示した。一方、実験群では、塩水の濃度依存的に明るい領域での滞在割合がベースラインでのそれよりも増加せず、馴化が示されなかった。さらに、テストの前の液体の呈示を明るい領域で行なったこと以外、上記と同じ手続きで実験を行なったところ、上記の実験と同じ結果が得られた。これらの結果は、塩水がプラナリアにとって、嫌悪性や報酬性以外の生理学的な効果や薬理学的な効果を引き起こしていることを示唆している。馴化が生じなかった原因として、塩水がどのような効果を引き起こしているのかについて、以下の仮説が考えられる。①塩水に晒されることによって目へのダメージが生じて明暗の弁別がつかなかった。②塩水が脱馴化を引き起こす刺激として機能した。③塩水は馴化学習の表出を妨げた。これらの仮説を検討するために、塩水に晒されたプラナリアが明暗弁別ができるかどうかを調べること、他の学習の表出障害を示すかどうかを調べることによって、プラナリアにとって塩水がどのようか効果を引き起こすのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、VideoTrackシステムを購入する予定であったが、同時に開発していた別の行動測定システムが使用に耐えうるものであると判断したため、VideoTrackの購入のための金額が繰り越された。この繰り越した金額で、2022年度に行なった実験のための装置の購入に使用したが、繰り越された金額が比較的多額だったため、2023年度への繰り越し金額として残った。最終年である今年度は、国際学会の発表の旅費や論文作成のためにかかる事務用品購入や経費、2023年度に計画している今後の研究の推進方策で書いた実験を行なうための装置の購入、消耗品や稼働している装置のメンテナンスにかかる費用に使用する計画である。
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