2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K03631
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鄭 容武 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (20314734)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 可微分力学系 / 大偏差原理 / マルチフラクタル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は新型コロナの影響により,海外及び国内での研究集会やセミナー,講演会などはオンライン開催であるものを除いて全く行われず,また移動を伴う外部との研究打合せを実施することができなかった.そのため,他機関の研究者との対面での議論を全く行うことができなかったが,eメール, Zoom, Skype や Overleaf といったインターネットによる通信手段を用いて,高橋博樹氏(慶應義塾大),山本謙一郎氏(長岡技術科学大),中野雄史氏(東海大),Jens Wittsten 氏(Lund University, Sweden)等と本研究の課題である力学系の極限定理,特に大偏差原理やマルチフラクタル解析に関する研究を行なった. 当該年度の実績としては,高橋博樹氏との共著論文 "Large deviation principle for S-unimodal maps with flat critical points" を学術雑誌 Journal of the Mathematical Society of Japan に投稿し掲載されることになった.この論文は,高橋氏と10年間に渡って共同研究を進めてきた1次元可微分力学系の大偏差原理に関する先行結果において,臨界点の非平坦性条件を補完する内容になっている.また,当該年度は対面による研究集会での講演の機会は得られなかったが,年度末に開催された日本数学会年会において,滑らかな多峰写像力学系が Lyapunov 双曲性とよばれる弱い双曲性を持つときに,軌道に沿った時間平均に関するレベル集合の Hausdorff 次元を不変確率測度のエントロピーと Lyapunov 指数の比を用いて変分的な方法で表す次元スペクトルに関する公式を発表した.これは,2次写像力学系について以前高橋氏との共同研究によって得られていた結果の一般化になっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は新型コロナ感染予防による対策のため,大学での講義が全面的に対面からオンラインに移行されるなど例年に較べて教育負担が大きかった.また,移動を伴う研究集会やセミナーに参加できず,研究打合せなどを実施できなかった.そのため,本研究を推進するための情報収集や研究発表,関連分野の研究者との対面での議論が全くできなかった.すでにまとめの段階に入っていた高橋博樹氏との1次元可微分力学系の大偏差原理に関する共同研究については,メールやインターネット上の意思疎通により論文を執筆投稿し,出版までこぎつけることができたけれども,山本謙一郎氏(長岡技術科学大),中野雄史氏(東海大),Jens Wittsten 氏(Lund University, Sweden)等との共同研究は,現時点で当初予定していたよりもやや遅れているのではないかと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,国内外の研究集会やセミナーに積極的に参加して幅広い分野の研究者と交流や研究打合せを行い,新型コロナが流行する以前のように対面での議論を活発に行いたいと期待しているが,当面は Zoom, Skype や Overleaf といったオンライン上の通信手段を今まで以上に駆使して,移動を伴う対面での議論ができない影響を最小限にとどめたい.次年度は特に,山本謙一郎氏(長岡技術科学大)との区分単調力学系の大偏差原理が成り立つための判定条件に関する共同研究,中野雄史氏(東海大),Jens Wittsten 氏(Lund University, Sweden)等とのランダム力学系の極限定理に関する共同研究を積極的に推し進めていきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
新型コロナ流行の影響により今年度計画していた出張等が中止になり旅費を支出できなかった.次年度以降に国内外への移動が可能になり次第,本研究遂行のために必要な研究集会やセミナーへの参加,研究打合せのために使用する予定である.
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