2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K03650
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三浦 毅 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90333989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大井 志穂 新潟大学, 自然科学系, 助教 (90891789)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 等距離写像 / local map / local isometry / 2-local isometry |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に,局所的な等距離写像(local isometries)に関する研究を行い,いくつかの結果を得た.まず単位閉区間[0,1]上で定義された連続微分可能な複素関数の全体C^1([0,1])に対して,その間の2-local real linear isometryを考察した.一般にTがBanach空間Bの間の2-local isometryであるとは,Bの任意の2点f, gに対して,S(f)=T(f)かつS(g)=T(g)をみたすB上の全射複素線形等距離写像Sが存在することである.この概念は,P.Semrlが導入したlocal mapのアイディアをもとに,Molnarによって提示され,その後2-local isometryの研究は活発になされるようになった.C^1([0,1])には様々なノルムが与えられることが知られる中で,我々は特に|f(0)|+||f'||をノルムとするBanach空間C^1([0,1])に対する2-local real linear isometryを解明した.ここで||g||はgの最大絶対値ノルムである.また,複素平面の単位開円板D上の正則関数で,その導関数がp乗可積分であるもの全体S^p(D)に対して,近似的局所的等距離写像(approximate local isometry)の概念を導入し,その構造を研究した.ここでS^p(D)の間の写像Tがapproximate local isometryであるとは,S^p(D)の任意の2点f, gに対してS^p(D)上の全射複素線形等距離写像の列{U_n}が存在して,n→∞のときノルムの意味でU_n(f)はT(f)に,U_n(g)はT(g)に収束することである.このとき,S^p(D)上の任意のapproximate local isometryは全射等距離写像であることを示すとともに,approximate 2-lolcal isometryの概念も自然な形で導入し,S^p(D)上のapproximate 2-local isometryは全射複素線形等距離写像であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
等距離写像の研究は,古くは1932年のBanachの研究にさかのぼることができる.この当時の等距離写像の研究では線形なものを対象としていたが,近年では線形とは限らない等距離写像が,自動的に線形になる現象が多く知られるようになり,活発な研究がなされている.この世界的な流れの中で,世界に先駆けた研究成果を挙げるため,線形とは限らない等距離写像や,局所的等距離写像の研究を進めることを目的としている.研究分担者である大井はKowalski-Slodkowskiの定理を精密化することにより,多くの空間において2-local isometryの形を決定する統一的手法を見出した.この手法では,対象とする空間の間の全射等距離写像が荷重合成作用素によって自然な形で記述されることを前提としている.そのため適用可能な空間とそのノルムに制約が課されるものの,その条件下では2-local isometryの構造を完全に解明するものである.一方で,全射等距離写像は一般に荷重合成作用素として表現されないため,大井による研究成果は多くの空間をカバーするものの,すべての対象に適用できるものではない.その一例としてC^1([0,1])やS^∞(D)のノルムとして|f(0)|+||f'||を与えた空間がある.これらのBanach空間では,全射等距離写像は荷重合成作用素と積分作用素の合成によって記述されることが知られている.このようなBanach空間に対する2-local isometryに対しては大井の手法を直接適用することはできないため,異なるアプローチが必要となる.実際,我々は初頭的な方法を用いてC^1([0,1])上の上記のノルムに対する2-local real linear isometryは全射実線形等距離写像であることを示すことができた.さらに1≦p≦∞であるpに対して,S^p(D)上のapproximate local isometryは全射等距離写像であることも証明した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究分担者である大井は,共同研究として関数環上のTingley問題に取り組み,それを肯定的に解決した.ここでTingley問題とは,Banach空間Bの単位球面S(B)の間の全射等距離写像は,Bの間の全射実線形等距離写像に拡張されるか,を問う問題である.この問題は1987年にTingleyによって提唱され,世界的に活発な研究が行われている分野である.これまで我々は,等距離写像の線形性は仮定せずとも自動的に導かれることがあることを,様々なBanach空間に対して示してきたが,Tingley問題においては線形構造をもたない球面S(B)上の等距離写像を考察するため,線形構造を経由しない方法によって等距離写像の構造を解明する困難に直面する.この意味でTingley問題は我々の研究を新たな方向へ進める大きな方針転換を迫るものと言える.これまでに全射等距離写像の決定したBanach空間に対して,Tingley問題は肯定的に解決されるか,は今後の大きなテーマである.そのためC^1([0,1])のいくつかの具体的なノルムに対してTingley問題を考察することにより,さらに広いクラスのBanach空間に対する結果を得ることを目指す.その際,ノルムの相違によって単位球面の構造も大きく異なるため,まずは|f(0)|+||f'||をノルムとするBanach空間C^1([0,1])のTingley問題を解明しなければならない.その後,このノルムの性質を抽象化し,より一般のBanach空間に対する結果へと拡張したい.また,大井らの結果では関数環が単位元を有することを本質的に用いているが,単位元の存在がTingley問題解決にとって必要か,あるいは単位元をもつとは限らない場合でも同様の結果が成り立つのかを考察することも重要な問題である.これらの問題に取り組む際に,双対空間の単位球の端点全体の集合に関する情報は極めて重要になることが予想される.これまでの研究成果を融合・発展させることにより,さらに研究を推し進める.
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Causes of Carryover |
研究計画申請時には,昨今のコロナウィルス感染症による世界的な行動規制を予想することは出来ず,また昨年度時点でも国内移動はもちろん,予定していた海外出張もキャンセルせざるを得なかったことは周知の通りである.研究費の多くを出張旅費として支出する計画であったため,適正な研究費使用のためには必然的に次年度使用額が生ずることとなった.この差額に関しては翌年度分として請求し,研究費使用計画を現在の状況に応じた変更を検討するとともに,今年度に関しては出張の規制が緩和されつつあることから,大学等の規則を遵守しながら可能な範囲で必要な研究出張を実施し,研究の発展につなげる.
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[Presentation] Shiho Oi2021
Author(s)
Surjective linear isometries on unital C*-algebra valued Lipschitz algebras
Organizer
Research on preserver problems on Banach algebras and related topic
Int'l Joint Research / Invited
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