2021 Fiscal Year Research-status Report
完全可積分系の方程式に対する解の時間大域挙動の研究
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20K03697
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
赤堀 公史 静岡大学, 工学部, 教授 (90437187)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非線形分散型方程式 / 基底状態 / ソリトン |
Outline of Annual Research Achievements |
Intermediate long wave方程式と呼ばれる2つの流体の境界面の運動を記述する方程式の時間大域的な挙動について研究した。この方程式は、流体の層の厚さの比に相当するパラメータが方程式に組み込まれていて、このパラメータを0にした時の極限方程式がKorteweg-de Vries方程式、パラメータが無限大の時の極限方程式がBenjamin-Ono方程式であることが知られている。これらの極限方程の研究は、ソリトン解と呼ばれる物理的にも数学的にも興味深い解の存在と関連し、1960年代後半から現在まで盛んに研究が行われてきた。特に、Intermediate long wave方程式, Korteweg -de Vries方程式, Benjamin-Ono方程式は可積分系と呼ばれるクラスに分類され、他の方程式には無い構造を有している。近年、可積分系の方程式の特性を活かした解析が開発され、Korteweg-de Vries方程式の研究に大きな進展があった。一方、Intermediate long wave方程式に対しては、近年開発された手法の応用には困難が生じる。この困難は、伝統的な解析手法である逆散乱法がIntermediate long wave方程式に対しては応用困難である事の理由と関係があると考え、逆散乱法に関する文献を学び、解決のヒントを模索中である。 Intermediate long wave方程式の時間大域的な挙動を明らかにするためには、長い研究期間を要するため、分散型の観点から共通点のある非線形シュレディンガー方程式の基底状態の研究も行ってきた。特に、基底状態の一意性、非退化性、線形化問題の安定・不安定モードの挙動に関する結果を得る事ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Intermediate long wave方程式に対し、Korteweg-de Vries方程式およびBenjamin-Ono方程式は、パラメータ0および無限大の極限として、それぞれ関係しているが、パラメータが残る事で、数学的な解析に大きな困難を生じさせる。伝統的な方法である逆散乱法がIntermediate long wave方程式には上手く適用できない事は研究当初から承知していたが、最近開発された可積分系に対する方法は、逆散乱法ほど複雑な方法では無いため, Intermediate long wave方程式に対しても応用可能であると期待していた。実際には、Korteweg-de Vries方程式およびBenjamin-Ono方程式とは異なり、応用に困難が生じる。この困難は、逆散乱法の応用の際に生じる困難とも関係があると考え、Lax pairの研究から始める方針が固まった。Intermedieate long wave方程式に対するLax pairに対しては、近年有効と思われる成果が得られているため, 現在考えている研究方針で期待する研究成果を得る事ができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Intermediate long wave方程式の解の時間大域的な挙動を研究するためには、解のソボレフ空間におけるノルムの時間大域的な制御が必要である。可積分系の方程式では、このノルムの制御は無数に存在する保存量によって可能であると考えられるが、低周波成分の制御は保存量だけでは直接制御できない。そのため、近年発展した方法に従い、疑似的な保存量を導入し、低周波の制御を行う。一方、この方法はKorteweg-de Vries方程式およびBenjamin-Ono方程式では上手く機能するが、Intermediate long wave方程式では困難が生じる事が分かっている。この困難を、Lax pairの詳細な解析を行う事によって克服し、低周波成分の制御を行う。低周波成分の制御ができれば、局所適切性や既存の保存量と組み合わせて、これまで知られているソボレフ空間よりも広い空間における時間大域適切性が証明できる。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響で予定していた国内外の出張ができなくなったため。特に、予算を消化するために大事な研究費を無駄に使用したくなかったため、敢えて次年度以降にまわした。海外出張が可能になれば計画どおり有効に使用できる。
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