2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K03772
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
古池 達彦 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (40286646)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子情報 / 時間最適性 / 量子最適効果曲線 / ポントリャーギン最大値原理 / 特異制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題研究の目的は量子系を素速く精確に制御する方法を明らかにすることである。制御とは系を所望の状態に保ったり変化させることを指す。量子系を自在に制御するためには外場や測定の影響を理解する必要がある。特に、最適制御の研究は量子ダイナミクスの限界を明らかにするという基礎研究のみならず、情報処理への応用という面でも意義が大きい。例えば現在の量子計算機においては、量子状態が壊れてしまう前にできるだけ多くの計算を行うことをが必須である。研究代表者は、従来から時間最適制御を変分原理により求める方法を開発してきた。それは「量子最速曲線法」と呼ばれている。 本年度は、時間最適量子制御に対する基礎理論を構築・確立した。当たられた制限下で所望の量子操作を最速に行う方法を求める理論である。これを、量子最速曲線法を「ポントリャーギン最大値原理」という手法で拡張することで実現した。その結果、従来扱えなかった不等式拘束条件を扱えるようになり、理論および応用上遭遇するほぼ全ての状況に適用可能となった。不連続制御等も自然に扱える。我々は早速、理論的応用として特異制御の最適性を一般的に論じた。特異制御は最適制御を求める際に理論的な障害になる制御の一群である。これは、最適性条件「最大値原理」を特異制御が自明に満たしてしまうことにより起こる。我々は、最適特異制御がみたすべき新たな一般的条件を二次変分を考察することにより導出した。特異制御を排除ないし制限することが可能になった。また、量子系の持っている制御可能な自由度との関連も明らかにした。これらの成果により、最適量子制御の理論の発展、および量子計算機をはじめとする量子情報処理の広範囲の応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度前半においては、準備状況が奏功して予定より順調に推移し、研究課題の第一の目的である時間最適制御理論の構築についてはかなり達成することができた。一方で、新型コロナウィルス感染拡大による研究機関への入構禁止等のため研究の進捗に影響が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はない。時間最適制御の基礎理論の構築と応用という目的の前者はかなりの部分達成できたので、今後は計画通り、量子計算機をはじめとする量子情報処理へ基礎理論を応用する。私は各々の自主性を重んじて学生の指導を行っているが、この課題に興味をもつ学生がいれば積極的にメンバーに加えていく方針である。本課題研究では基礎理論を応用する際に微分方程式を数値的に解くこと必要になる。最近の計算機の進歩によりいわゆる高性能計算がパソコンのレベルで手軽に行えるようになってきた。その導入により応用研究を加速できる可能性が考えられるため前向きに検討している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために研究発表や研究打ち合わせの機会が激減したため出張等の出費がほぼなかった。ただし、同理由により教育業務の負担が増したこともあり、無理に他の用途に使うこともしなかった。本課題研究では基礎理論を応用する際に微分方程式を数値的に解くことがどうしても必要になる。最近の計算機の進歩により、大規模メモリの並列計算などのいわゆる高性能計算がパソコンのレベルで手軽に行えるようになってきたため、そのような高性能パソコンの導入を検討しているところである。
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Research Products
(1 results)