2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K03803
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
松本 益明 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40251459)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 二酸化チタン / 水素 / 光触媒 / 低速電子回折法 / 光電子分光法 / 核反応解析法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度においては、まず、2021年度の実験においてフィラメント加熱により黒色化した実験結果の検証をおこなった。単結晶のTi02(110)試料について、試料を加熱しながら水素を導入する際に水素の圧力を変化させて黒色化を行い、撮影画像から黒色度を見積もったところ、水素の圧力が低くなるにつれて黒色度が低くなり、水素の導入を行わない場合には黒色化しないことがわかり、ブラックチタニアの作製水素の導入が必要であるという結論に至った。さらに黒色化後の表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察したところ、表面の凹凸が、導入水素の圧力に依存して増大することがわかった。超高真空中で単結晶TiO2(110)試料をきちんと清浄し、低速電子回折法(LEED)により鋭い回折点が観察されることから高い周期性が表面に存在することを確認した後に水素を導入してフィラメントで解離させて表面に照射して黒色化したところ、試料の周期性が悪化してlEEDの回折点の強度が大幅に下がり、[1 -1 1]方向に回折点が連なるストリークが観察され、その向きの周期性が下がったことが分かった。さらに真空外に取り出さずに走査トンネル顕微鏡法(STM)を用いて表面の幾何学的構造を調べたところ、清浄なTiO2(110)面では[001]方向の1 nm 以下の凹凸を持つ原子列が観察されるのに対し、黒色化後の表面では数nm程度の強い凹凸が観察され、上のAFMによる観察結果と一致する結果が得られた。さらに、この試料を真空外に取り出し、修理の終了した光電子分光装置において、XPSの測定を行ったところ、Tiの2p軌道に関してはほとんど変化がなく、Oの1s軌道において、Oの2価の負イオンの存在を表すピークの高結合エネルギー側のピーク強度が若干し、OH基が形成されていると考えられ、STMやAFMの結果と対応していると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度は本科研費の最終年度であったが、新型コロナウイルス感染による行動制限が続いていたこともあり、主に東京学芸大学及び東京大学生産技術研究所での実験を並行して進めた。 東京学芸大学では2021年度において以前の実験結果と異なる結果が得られたため、実験結果の検証を行うのにかなりの時間を要した。検証の中で実験方法の改善をおこない、再現性が向上したため、今後条件を制御しながらの試料作成と評価につながると期待している。東京大学生産技術研究所では紫外/X線光電子分光法(UPS/XPS)の装置の絶縁不良の修理にかなりの時間と費用を要した。以上のことから課題の進捗状況は遅れており、補助期間を延長させていただくこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
東京大学物性研究所の陽電子測定装置については2022年度においても整備を進めることができず、その整備には多大の時間と費用が必要と考えられることからその利用を諦め、他の研究所の陽電子実験装置を利用して実験を進める予定である。東京学芸大学においては引き続き簡易的な黒色化装置を用いてアナターゼナノ粒子の黒色化を行い、黒色化と水素の圧力および試料温度との関係について研究し、東京大学生産技術研究所においては、単結晶TiO2(110)を用いて原子レベルの幾何学的および電子的構造について研究を行う。さらに、黒色化前の段階でステップが多数存在する試料を用いて同様の実験を行うことで、ステップの効果についても研究する予定である。東京学芸大学や東京大学生産技術研究所で作成した試料を用いて陽電子実験も行い、黒色化と表面近傍の欠陥との関係について研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度は補助金の最終年度であったが、引き続き行動制限があったため、実験や学会への参加に制限があった。国際会議での発表はできたが、国内であったため、旅費の費用は大きくなかった。2021年度からの繰り越しもあったが、2022年度の研究が遅れたこともあり、科研費の補助期間を延長することとしたため、2023年度に研究するための予算を確保することとした。2023年度においては、行動制限が撤廃されたため、他の研究機関での研究を増やし、国内外での会議に参加して、研究成果の発表を行いたいと考えている。
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