2021 Fiscal Year Research-status Report
Dynamics of rotating black holes in AdS
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20K03976
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
村田 佳樹 日本大学, 文理学部, 准教授 (00707804)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 相対論 |
Outline of Annual Research Achievements |
漸近AdS時空中の重力理論と強結合する場の理論の間には、等価性があることが予想されている。この対応関係はAdS/CFT対応と呼ばれている。特に有限温度の場の理論はブラックホール時空の物理で記述されることが示唆されている。それが正しいとすると場の理論の観測可能量を用いて、ブラックホールの姿を見ることが出来るはずである。我々は、ホログラフィック超伝導と呼ばれるモデルを用いて、ブラックホールのつくるアインシュタインリングを観測することが出来ることを確認した。超伝導体に空間的に局在した外電磁場を印加し、その応答である電流を測定する。その電流分布にはブラックホール時空を伝搬してきた波動の情報が含まれるので、ブラックホールの像を構成することが出来るのである。
近年、 Maldacena, Shenker, Stanfordにより、カオスの強さを表す「リアプノフ指数」に上限があることが予想されている。その「リアプノフ指数」は有限温度の場の理論における非時間順序相関関数で定義される。もしその上限値を満たすのであればその場の理論は重力双対を持つことも示唆されている。我々は、エネルギー一定の条件の元での非時間順序相関関数に注目することで、「リアプノフ指数」のエネルギー依存性に対してもある種の上限が存在することを予想した。この予想は実際に多くのモデルで満たされていることを確認している。
測地線を調べることで、時空の計量に関する情報を引き出すことが出来る。漸近AdS時空における測地線を作ることができれば、ある場の理論が与えられたときにその双対時空の計量を決定することが出来る。我々は、場の理論に適切な外場を与えれば、バルク時空中に公転する星を作れることを実際に示した。その星の運動から時空の計量の情報を読み解くことが出来ることも確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画で行って来たことを起点として、上で述べたような、「ホログラフィック超伝導と呼ばれるモデルを用いて、ブラックホールのつくるアインシュタインリングを観測する方法の提案」・「リアプノフ指数のエネルギー依存性に対する上限仮説」・「AdS時空中に星を生成する方法の発見」といった幅広い研究につなげることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
1.高い振動数を持つ共鳴ブラックホール解の構成: 共鳴ブラックホールは、定在重力波の持つ固有振動数で特徴付けされる。先行研究で超放射不安定性の終状態として予言されているのは、固有振動数が無限に大きい共鳴ブラックホール解である。よって、我々は特に高振動数を持つ共鳴ブラックホールを構成する。共鳴ブラックホールの相図を決定し、熱力学的な安定性を調べる。 2.超放射不安定性の非線形シミュレーション: SU(2)対称性を保つ条件下で、超放射不安定性の非線形時間発展を追う。終状態のブラックホール解を特定し、それが場の理論側でどのような相に対応しているのかを決定する。裸の特異点が形成された場合は、それが場の理論側でどのようなシグナルとして現れるかを調べる。
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Causes of Carryover |
理由: 新型コロナウイルスの影響により海外出張に行けなかったため。 使用計画: 状況が改善されれば、次年度使用額は海外旅費として使用し、研究成果発表を積極的に行う。改善されない場合は、国内の研究者との議論を積極的に行うための国内旅費に使用する。または出張数値計算効率を上げるための計算機を導入するために使用する。研究者の招聘や、研究会の開催も検討する。
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