2022 Fiscal Year Research-status Report
Microscopic description of fundamental nucleosynthesis processes by large-scale shell-model calculations
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20K03981
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
宇都野 穣 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主席 (10343930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 則孝 筑波大学, 計算科学研究センター, 准教授 (30419254)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大規模殻模型計算 / 核構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
陽子数と中性子数が同数である偶偶核で鉄よりも陽子数の小さなものは、恒星中の元素合成において中心的な役割を果たす。そのうち、炭素12核とカルシウム40核の大規模殻模型計算によって、これらの核構造についての新しい知見を得た。 炭素12核については、現実的核力を用いた第一原理モンテカルロ殻模型計算を遂行し、ホイル状態と呼ばれる第2励起状態のクラスター構造を調べた。殻模型計算によって物体固定系の密度分布を得る新手法をその状態に適用したところ、ホイル状態は3個のアルファ粒子がゆるく結合したクラスター構造が主であるとともに、液滴状態も混合しているという結果が得られた。その両者の混合によって基底状態への電磁遷移が大きくなり、炭素12核の基底状態がトリプルアルファ反応で得られるというシナリオが得られた。この成果は、Nature Communications誌に出版された。 カルシウム40核については、最近実験で観測された、超変形状態から基底(球形)状態へのE0遷移が極めて小さくなるメカニズムを調べた。従来、異なる2つの原子核形状からのE0遷移は両者の変形度の差と波動関数の混合の割合という2つの量と関係づけられてきたが、カルシウム40核では3つの異なる原子核形状が共存、混合することによって、波動関数の符号というこれまで考慮されてこなかった量が重要な役割を果たし、それによって極めて抑制されたE0遷移行列要素が生じることがわかった。この成果は、実験との共著論文として、Physical Review Letters誌に出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
元素合成過程に重要な役割を果たす核構造の研究に関しては研究実績の概要で記したような重要な成果が挙がった。しかし、こうした基底状態近傍の核構造研究に時間がかかり、当初予定した、光核反応や核準位密度の研究に関しては、一部の原子核しか計算結果が出ていないため、やや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
核準位密度やガンマ線強度関数の殻模型計算を遂行するため、その分野の研究が活発なオスロ大学との共同研究を進める。2023年度からオスロ大学の大学院生と共同研究を進める準備ができている。
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Causes of Carryover |
2022年度の実支出額はその年度に配賦された直接経費(600千円)を超えたものの、2020年度と2021年度に新型コロナウイルス禍のため国内外の出張に制限がかかっていた影響で次年度使用額が生じた。次年度使用額は2023年度に、成果発表、情報収集、共同研究に向けた議論を行うために必要な旅費として執行する計画である。
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