2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of monolithic type pixel detector to search for axion like particle
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20K04004
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
田窪 洋介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50423124)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 新粒子 / FASER / LHC / シリコンピクセル検出器 / アクシオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2022年から欧州原子核研究機関(CERN)で開始するFASER実験において、アクシオン的粒子(ALP: Axion Like Particle)を探索するためにBiCMOSモノリシック型ピクセル検出器を用いた前段シャワー検出器の開発を目指している。本科研費で行う研究事項は、「ピクセル検出器に使用する基板類の開発」と「データ収集システム用ソフトウェアの開発」によって前段シャワー検出器を実現させることである。令和2年度の研究実績の概要は以下の通りである。
* ピクセル検出器に使用する基板類の開発:前段シャワー検出器では、4センサーをフレキシブル基板(モジュール基盤)に接着してモジュールとし、8モジュールを使用して1レイヤーとする。各モジュールにはピッグテールと呼ばれるフレキシブル基板が接続される。そして、ピッグテールをデータ収集システムや電源などに接続するためのインターフェース基板を使用する。本研究では、モジュール基板、ピッグテール、インターフェース基板の開発を行う。令和2年度はこれらの基板類について、ピクセル検出器の開発を行っているジュネーブ大学と協力研究者である音野氏と議論を行い、業者に基板類の製造を依頼するための設計を固めた。
* データ収集システム用ソフトウェアの開発:本研究では、モジュールやレイヤーを試験するためのデータ収集システムの開発を行う必要がある。読み出しボードにはFASER飛跡検出器であるシリコン・ストリップ検出器の読み出しに使用されるGPIOボードを用いる。本科研費では、システム制御を行うためのソフトウェアを開発する。令和2年度は、前段シャワー検出器の設計を固めたことにより、必要なデータリンク数などが明らかになった。それらの情報に基づき、データ収集システムの設計の概要を決めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本科研費で行う前段シャワー検出器の基板類の開発について、当初の予定よりも若干の遅れが出ている。これについて主な理由は2つあり、1点目は新型コロナウイルスの影響である。ピクセル検出器の開発はジュネーブ大学が担当しているが、令和2年度の前半は同大学の研究者が大学に長時間滞在することができず、前段シャワー検出器の中核をなすピクセル検出器の設計と開発が遅滞してしまった。また、本研究者はこれまでCERNに滞在しながら研究活動を行ってきたが、令和2年3月以来日本に滞在することを余儀なくされている。それにより、ジュネーブ大学との共同研究が思うように進まなかった点も要因として挙げられる。 本研究者は前段シャワー検出器の基板類の開発を担当している。本科研費を獲得した時点で、基板類以外の予算についてはジュネーブ大学が競争的資金を獲得して賄う予定にしていた。研究に遅れが出ている理由の2点目としては、ジュネーブ大学の科研費獲得の状況を見極めてから、基板類の発注を行いたかったためである。 本研究者は令和3年4月にCERNに戻る予定になっている。さらに、令和3年3月にジュネーブ大学が予算獲得に成功したため、基板類の製造依頼を行う状況が整った。このように上記の研究遅延の原因は解消されたため、今後研究の進展は加速すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前段シャワー検出器のための基板類は本科研費によって賄うことができ、それ以外の経費については令和3年3月にジュネーブ大学が競争的資金の獲得に成功した。これによって、前段シャワー検出器を実現するための資金にほぼ目途がついたので、今後は検出器の開発を加速していく。また、新型コロナの影響によって本研究者が日本に滞在しなければなかったことは、令和2年度の研究遅延の原因の1つになっていたが、令和3年4月に本研究者はCERNに戻ることになっている。これにより、ジュネーブ大学との共同研究も円滑に進むことになる。 以上の状況を踏まえ令和3年度は、モジュール基盤、ピッグテール、インターフェース基板の試作を行う。令和2年秋にジュネーブ大学はピクセル・センサーのプロトタイプを開発している。そのため、令和2年度に基板類の設計は完了しているが、発注の前にセンサー・プロトタイプの性能評価試験の結果を設計に取り入れる。そして、令和3年度の前半に試作品の発注を行う。年度の後半には試作品の性能評価に取り組み、実機用基板の設計を行う。 データ収集システムのソフトウェアの開発も開始する。まずは前段シャワー検出器1レイヤーを読み出すためのシステム開発に取り組む。このシステムは、モジュールやレイヤーの量産時の試験システムとしても使用する。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた原因は「現在までの進捗状況」で述べたとおり、新型コロナとジュネーブ大学の予算獲得状況の確認のために基板類の開発が遅れたことによるものである。そのどちらの要因も令和3年度には解消されるため、次年度使用額は徐々に消化されていくと考えている。 令和3年度前半は、次年度使用額を用いて令和2年度に予定していた基板類の試作を行う。そして、可能であれば年度の後半に実機用基板を量産する。しかし、状況次第では再度次年度繰り越しを行い、令和4年度に発注を行う。
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Research Products
(6 results)