2020 Fiscal Year Research-status Report
Exploring petit-spot volcanoes into accretionary complex
Project/Area Number |
20K04098
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平野 直人 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (00451831)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 太平洋プレート / 付加体 / アルカリ玄武岩 / 緑色岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
三陸沖の太平洋深海底で2006年に申請者が発見したプチスポット火山は、プレート直下に存在するアセノスフェアの溶融物(マグマ)が日本海溝に沈み込む太平洋プレートの屈曲に起因する割れ目に沿って上昇し形成された地球上の新種の火山である(Hirano et al., 2006, Science)。これらは、世界各地多くの事例で類似のマグマ組成が確認され、旧来の概念である沈み込む海洋プレートの実態を塗り替えている。これまで沈み込む海洋プレート上に存在していた海山の付加だと漠然と認識されてきた付加体中に取り込まれたアルカリ玄武岩体についても、その起源について再考が必要となってきた。 本研究では、実際の太平洋深海底に存在するプチスポットのアルカリ玄武岩とホットスポットのアルカリ玄武岩の比較検討を行い、日本各地に分布する付加体中のアルカリ玄武岩の起源を解明する。
平野 (2020, 新地球 1, 33-41)では太平洋プレート上と付加体中アルカリ玄武岩緑色岩の組成を比較検討し、プチスポットのもの (Liu, Hirano et al., 2020, Nature Comm. 11, 172; Yamamoto, Hirano, Kurtz, 2020, EPSL 552, 16611) や、白亜紀海山の形成ステージによる玄武岩組成変化 (Hirano et al., 2021, Island Arc 30, e12386)、背弧海盆のアルカリ玄武岩 (Morishita, Hirano et al., 2020, Solid Earth 11, 23-36) について、多種にわたってその化学組成の検討を行った。更に、Sakai, Hirano et al. (2021, Geol. Mag. 158, 72-83) では、実際の付加体である常呂帯アルカリ玄武岩体について検証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初ターゲットに据えていたカリフォルニアのフランシスカン付加体中の赤色チャートに脆性破壊させて貫入するアルカリ玄武岩(Dumitru et al., 2018)は、渡航制限の長期化に伴い断念し、国内の付加体に変更した。初年度は、愛知県犬山市と沖縄県名護市など、国内付加体中のアルカリ玄武岩の野外調査と岩石試料採取を行った。
更に、主に現在の太平洋プレート上の、プチスポット、ホットスポット両者のアルカリ玄武岩の化学組成を網羅させ、付加体中のものを比較検討するためにその特徴を主成分分析を用いて解析を行っている。付加体中のアルカリ玄武岩の化学組成の特性をホットスポットおよびプチスポットに分類させる比較対象として、どのような元素含有量や元素比の特徴を持つのか、数値的に分類し、比較することを予定している。 上記「研究実績の概要」で述べたとおり、プチスポット、ホットスポット、背弧海盆、付加体緑色岩、各種アルカリ玄武岩の化学組成についての査読付き国際誌学術論文が、5本のものが公表に至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では今後、付加体中のアルカリ玄武岩の解析を増やし、その特徴を分類する。現在進めている北海道東部、東海地方、沖縄諸島の岩石試料の化学分析や産状のデータの集約に加え、渡航制限が解除となった際のカリフォルニア、フランシスカン付加体巡検を計画している。
現在の太平洋プレート上のアルカリ玄武岩類の主成分分析の途中経過によると、プチスポットの玄武岩、ホットスポットのメイン活動時のもの、ホットスポットの再生期活動時のもの、それら組成の特性がそれぞれ明瞭に分かれることが見えてきている。このため、付加体中のアルカリ玄武岩についての分類の可能性が期待できる。
本研究の重要性は、付加体の玄武岩体(緑色岩)の噴出場が再分類されることにより、その付加時期、過去のプレート挙動の復元が可能となるところにある。太古の時代から付加体によって成長してきた日本列島の基盤がさらに詳細に復元されるに至ると予想される。
|
Causes of Carryover |
年度を通して行われた渡航制限のため、当初研究計画に盛り込まれていた海外学術調査について、計画変更が生じ、国内学術調査に切り替えた。この計画変更に基づき、海外学術調査は次年度に延期する。
|
Research Products
(9 results)