2020 Fiscal Year Research-status Report
ザトウクジラの胸ビレを模した前縁波形状翼の羽ばたき運動による流体力発生機構の解明
Project/Area Number |
20K04289
|
Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
安田 孝宏 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (60347432)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南川 久人 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (60190691)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 前縁波形状翼 / 非定常流体力 / ザトウクジラ / 生物模倣技術 / ピッチング運動 / ヒービング運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉱物資源調査や地球環境問題のデータ収集のための海洋調査には海洋調査機器の開発が重要となる.本研究では海洋調査に用いる機動性の良い魚型水中ロボットへの適用を目指し,機動性の良いザトウクジラの胸ビレを模した前縁波形状翼を開発を行う.特に前縁波形状翼の羽ばたき運動に着目し,その非定常流体力発生機構の解明を目的とする.2020年度は、羽ばたき運動する前縁波形状翼に作用する非定常流体力を調査し,羽ばたき運動や翼前縁の波形状の効果を明らかにした.具体的には以下の内容を行った. まず、ザトウクジラの遊泳動画を運動解析ソフトで解析した。その結果,胸ビレの羽ばたき運動の振動振幅や周波数を得ることが出来た。この結果は次年度以降の羽ばたき運動翼の流体力測定の際の運動翼の挙動の参考データとなる。 次に、運動翼を用いた風洞実験を行うために、風洞装置試験部に電動スライダおよびステッピングモーターを設置し、翼の上下運動や回転運動を可能にした。また、翼に作用する非定常流体力(揚力・抗力)の測定するためにロードセルを設置した。 上記の実験装置を用いて,一様流中で回転運動や振動運動する翼に作用する揚力を測定した。実験では固定翼と運動翼の結果を比較することで、翼の運動が流体力に及ぼす影響を調べた。また、前縁波形状翼と前縁直線翼の結果を比較することで、前縁の波形状の影響を調べた。実験結果より,振動運動や回転運動させることにより,ピーク時の揚力は固定翼を準定常的に運動させた場合に比べて増加することを明らかにした。また,前縁波形状翼を用いることで、揚力のピークを過ぎた後の揚力低下の勾配を緩和出来ることを明らかにした。 以上の研究結果により、魚型水中ロボットのような運動翼に対して運動する前縁波形状翼を用いることで、旋回性能に重要な揚力のピークが増加し,また,その高性能を維持できる可能性があることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた、ザトウクジラの胸鰭の運動解析や、運動する翼に作用する非定常流体力の測定装置の作成および非定常流体力測定は行うことができた。また、当初の予想通り前縁波形状翼の利用により翼性能が向上する結果が得られた。 しかし、運動する翼の流体力を測定する際、回転軸の偏心や翼の振動の影響により固定翼の場合に比べてロードセルのノイズが大きくなった。その結果、値が小さい抗力の測定は断念し、揚力のみの測定に切り替えた。ただ、魚型水中ロボットの胸鰭の性能で重要となるのは揚力であるため、必要なデータは得ることが出来た。 また、当初計画では、ザトウクジラと同様の羽ばたき運動を行う翼の流体力を測定する予定であったが、前述のロードセルのノイズ対策に時間がかかったため、回転運動と振動運動を個別に行った場合の流体力測定のみの実施となり、羽ばたき運動時の流体力測定の実施は今年度に持ち越しとなった。 以上の結果より、現在の進捗状況をやや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、昨年度実施できなかった翼が羽ばたき運動する場合の非定常流体力測定を行い、ザトウクジラと同様の羽ばたき運動を行った場合に最も翼性能が向上するか確認を行う。次に、当初予定した流れの可視化を行い,羽ばたき運動する前縁波形状翼で翼性能が向上するメカニズムの解明を行う.これらの実験を遂行する際に予想される2つの問題点とその対策を以下に記す。 1つ目は、前述のように運動翼に作用する抗力が測定できていない点である。揚力に比べて寄与は小さいと考えられるが、魚型水中ロボットの推力にも関わるため抗力の測定も出来れば行いたい。対策として、現在の一方向の流体力を測定するロードセルを組み合わせる方法ではなく、より高精度な6分力ロードセルの購入することで、測定精度の向上を試みる。 2つ目は可視化方法である。当初目的ではステレオPIVシステムを購入して3次元渦構造を可視化する予定であったが、支給された予算では不足する可能性がある。その場合は、数値流体解析を用いて3次元渦構造を明らかにし、その結果の妥当性を2次元PIVで検証することを考えている。
|