2021 Fiscal Year Research-status Report
数理最適化に基づくノイズフィルタのレイアウト創成設計
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20K04445
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 慎太郎 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70581601)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 最適設計 / トポロジー最適化 / ノイズフィルタ / レイアウト設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、コンパクトかつ十分なノイズ減衰性能を持つノイズフィルタの実現を目的としてレイアウト設計に数理最適化の考え方を導入し、数理的・電磁気学的根拠に基づき最適なレイアウトを創成する、新たな設計方法の確立を目指す。応募者は、2019年度以前の研究を通じて、ノイズフィルタの素子の配置位置が予め与えられた条件において、トポロジー最適化と呼ばれる構造最適化法を用いてノイズ減衰性能を最大化する導体パターンの最適なレイアウトを創出する方法を構築していた。2020年度はその研究をさらに発展させ、素子の配置位置をも設計対象として、ノイズ低減性能を最大化する方法を構築した。この方法は、複合領域最適設計の分野において盛んに研究されているサロゲートモデルと呼ばれる、複雑な振る舞いを示す関数を比較的単純で挙動を理解しやすい関数に置き換え、大域的な視点から満足解を探索する手法を、トポロジー最適化と組み合わせたものである。これにより、従来のトポロジー最適化と比較して、はるかに広大な設計空間を解探索することが可能となり、従来法よりも高性能なレイアウト設計の実現への道を切り開いた。より具体的には、素子の配置位置と、それらを結ぶ銅配線レイアウトパターンの両者を総合的に最適設計することが可能となり、素子の配置位置を予め与える場合よりも高性能のノイズフィルタのレイアウト設計が実現可能となる。上記の研究成果を論文としてまとめ、2021年4月に査読付き学術雑誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の助成を申請した際に申請書に記述したように、本研究の1年目において、従来手法では予因子であった素子の配置位置をも設計変数として、より広い解空間を探索するノイズフィルタのレイアウト最適設計法の開発を目的として設定した。これに対して、2020年度に、導体パターンのレイアウト設計のみならず、素子の配置位置をも設計対象とする総合的なレイアウト設計法を構築し、導体パターンのレイアウト設計のみを行う従来手法よりも、ノイズ低減性能の高いノイズフィルタのレイアウト最適化を実現した。その成果は2021年4月に、査読付き学術雑誌論文として発表済みである。また、2021年度には、ノイズ低減の対象となる周波数を単一の周波数から周波数帯域へ変更した場合の検討に着手している。このように、本研究は、概ね当初の見通しに従って順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度までの研究成果を元に、2022年度はノイズ低減の対象となる周波数を単一の周波数から周波数帯域に変更した場合の検討を、継続して行う。具体的には、周波数帯域において複数の周波数をサンプリングポイントとして設定し、サンプリング周波数におけるノイズ低減性能を総合的に最適化する手法の構築を目指す。これと並行して、ノイズ低減性能を制約条件として、ノイズフィルタの全体サイズを最小化する構造最適設計法の構築にも取り組む。すなわち、2021年度までは、全体サイズは与条件として固定した上で、導体パターンのレイアウト、素子の配置位置を設計対象として、ノイズ低減性能を最大化する最適設計法の構築を行ったが、これに対して、2022年度は、全体サイズ、導体パターンのレイアウト、素子の配置位置の全てを設計対象とし、ノイズ低減性能を制約条件として所定のノイズ低減性能を保証した上で、全体サイズを最小化する、ノイズフィルタの最適設計法の構築を目指す。設計対象がより複雑化するものの、最適設計問題の数学的な基本構造は、2021年度までに取り組んだ問題と同様のため、これまでに構築した最適設計法の拡張により、目的を達成できるものと見込んでいる。以上の取り組みにより、より実用に即したノイズフィルタの最適設計の実現を目指す。
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Causes of Carryover |
2021年度はコロナウィルスの蔓延により、当初予定していた国際会議発表や国内会議発表、研究調査のための出張などの多くが取りやめとなったため、50万円の未使用額が発生した。これらについては、2022年度の研究における計算機環境の拡充やソフトウェアの購入・保守費用に充て、研究のさらなる推進を期する所存である。
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