2020 Fiscal Year Research-status Report
環境DNAを用いた生態環境多様性指数の河川魚類生息場評価指標としての普遍性の検証
Project/Area Number |
20K04750
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
関根 雅彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30163108)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 環境DNA / 生態環境多様性指数 / 河川魚類生息場評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らが開発した生態環境多様性指数(EED)は、山口県内の中小河川で魚種数と正の相関があることが示されている。本研究の目的は、環境DNA(eDNA)と遠隔測量技術を援用し、大河川や他の地域の河川に対するEEDの適用可能性を検証し、その普遍性を示すことである。R2年度は、既往のEED研究対象河川31区間において環境DNAを測定し、魚種数の代替指標としての有効性を検討した。また大河川として佐波川の瀬淵のある区間と単調なトロ区間が上下に連続する1km区間を選定し、瀬淵区間下流端(=トロ区間上流端)とトロ区間下流端においてeDNAを横断方向3×水深方向2の1断面あたり6点で測定するとともに、遠隔操作ボートおよびグリーンレーザー測量による河床地形データに基づいてEEDを計算した。まず、佐波川では、eDNAカウント数に閾値を設けることで、EEDが高い上流部でeDNAによる検出魚種数が多く、EEDが低い下流部でeDNAによる検出魚種数が少なくなる結果が得られた。また横断方向で検出魚種数に違いが見られ、よりEEDが高い水際部で魚種数も多くなる一方、水深方向では検出魚種数に違いは見られたものの、底生魚、遊泳魚などの生態の違いと符合するものではなかった。従って大河川で調査をする場合、水深方向では複数点で採水したものを混合すれば良く、横断方向には必要に応じて別サンプルとしても良いことが推察された。一方、既往研究対象河川31区間では、既知の魚種数、EEDとeDNAカウント数が符合する場合もあれば符合しない場合もあった。既往研究では魚種の直接採捕を行ったため、調査対象区間が20m程度であったが、eDNAの検出範囲がそれより大きいために符合する結果が得られなかったものと推察された。この点については、既往研究と符合する河川、符合しない河川を選定し、500m~1kmの区間で測量とEED再計算を行い、eDNAの検出範囲の考察につなげる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の採水方法にはUAVを用いた遠隔採水技術を援用する予定であったが、予算減額のため断念し、スクーバ潜水による人力採取を行った。結果として、水深方向に正確な位置での採水が可能であったため、eDNAの深度方向分布についての情報が得られるなど、当初計画以上の成果が得られた。一方、中小河川のeDNA調査では、申請者らの既往の研究で得られている魚種数やEEDとの整合性は確認できなかった。これについては、大河川佐波川調査において、eDNAの流下距離と同じスケールのEEDとeDNAには相関がみられることから、中小河川でeDNAとEEDの関係を考察するためには、これまでの20m区間ではなく、500m~1km区間のEEDを計算する必要があると推察された。次年度への課題とはなったものの、eDNA研究で常に問題となる影響範囲への考察ともなり得るため、積極的に取り組んでいきたい。以上、R2に予定された調査はすべて実施し、大河川においては期待した成果を上げることができた。中小河川においては予定していなかった新たな知見への糸口が見つかった。このことから、おおむね順調に進展しているものと評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
R3年度は、当初計画どおり、他地域の中小河川、大河川でのeDNA測定およびEED計算を行う。一方、山口県内の既往研究河川においては、当初計画になかった新たな測量調査を行い、長区間におけるEED計算を実施して、R2の中小河川eDNA調査結果の再評価を行う計画である。
|
Research Products
(1 results)