2020 Fiscal Year Research-status Report
火災時の避難環境体験型訓練施設の整備:避難行動の困難度に応じた仕様の設定
Project/Area Number |
20K04805
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
秋月 有紀 富山大学, 学術研究部教育学系, 教授 (00378928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 秀樹 国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 主任研究官 (60411229)
堀 祐治 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (70432119)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 建築火災 / 視認性 / 歩行速度 / 煙濃度 / 照度分布 / 輝度分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、什器や不要なサインが存在する実際の建築空間の利用状況を踏まえて、人間の避難行動の変動を把握し、火災の危険性を体感できる効果的な避難訓練施設のプロトタイプを構築することを目的としている。研究では富山県広域消防防災センター内の施設「迷路避難室」を用いて、様々な照明状態や空間形状、および火災煙濃度を設定して被験者実験を計画している。 本年度は先ず「迷路避難室」の実験条件の設定方法について検討した。12m×5mの空間内に1mグリッドでフレームが設置されており、照明器具および誘導灯の配置・制御方法を構築した。また既存の発煙装置の性能と室内の煙濃度の分布状態を測定し、煙濃度の設定方法を構築した。 また本研究の基礎データとなる、煙のない12m×1mの直線経路での照明条件下での歩行速度および心理評価(路面全体および誘導灯の視認性・前進し易さ・避難経路としての許容度)に関する被験者実験を実施した。照明条件は、照度分布2パターン(5m間隔および10m間隔に照明器具を配置)、床面平均照度(0, 0.1, 0.3, 1, 3lx)、誘導灯の有無であり、全条件について照度分布と輝度分布も測定した。被験者は高齢者16名・若年者12名であり、視力検査を実施し、視力0.9以上とそれ以外の2群に分類して分析した。その結果、床面平均照度と歩行速度および視認性評価とは相関が認められたが、年齢層・視力群および照度分布パターンの違いに有意差が認められなかった。経路の照明が全て消灯している平均床面照度0lxの条件では殆どの被験者が経路として許容できなかったが、誘導灯のみが点灯するだけで各種心理評価が向上し、歩行速度も速くなった。この両条件では視野の平均輝度も等しいが、輝度1cd/m2以上の領域が視野内に2倍占めることが、評価の違いに影響したと考えられ、輝度分布に基づく避難経路の設計の重要性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「迷路避難室」の煙制御が予想以上に困難であり、実験条件の煙濃度に設定する方法および実験時間の見積もりに時間を要した。また「迷路避難室」を45℃かつ煙のある条件で被験者実験をすることは、実験条件を安定状態にすることが困難であり、かつ被験者が実験辞退をする可能性が高いことを確認したため、次年度以降の実験では加温しない平温条件(28℃程度)にすることとした。 また、コロナ禍で遠方移動や被験者実験実施が困難な時期があり、実験スケジュールの変更をしなければならなかった。しかし、本研究の基礎データとなる”煙のない条件での定量的被験者実験”は無事に完了できた。それにあたり、「迷路避難室」の照明条件を効率良く設定する方法も構築することができた。さらに、視野内の輝度分布が避難行動に影響することを明らかにし、次年度以降の実験計画に加えることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画にあったサブテーマ(A)路面照度分布の異なる避難経路では、天井照明を前提としていたが、視野輝度分布の違いを実験条件に加え、床面に設置間隔の異なるライン照明を配置して実験する。 現在もコロナ禍の収束に目処が立っていないこともあり、被験者実験の実施がスケジュール通りに行かないことが次年度以降も十分考えられる。当初、サブテーマ(B)什器のある居室、およびサブテーマ(C)ノイズサインのある避難経路、についても本研究で実施する予定であったが、上記のように追加修正した(A)と(B)を中心として研究計画を修正する。特に(B)については、京都アニメーション火災の2階のベランダまでの避難動線を参考にした什器配置や、視認性の悪い条件下での出口操作(窓や扉の開閉)を実験条件として追加することを次年度に検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により実験スケジュールが変更となり、予定していた被験者実験が実施できなかった。また遠方での研究打合せはとりやめて全て遠隔会議で対応したため、旅費も減額となった。 本年度の未使用額は、被験者実験の執行、およびそれに伴う遠方での会議のための旅費に執行する予定である。
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Research Products
(3 results)