2021 Fiscal Year Research-status Report
Creation of urban environmental climate map, planning guide map and digital environmental chart for the realization of environment-conscious city
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20K04819
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
円井 基史 金沢工業大学, 建築学部, 准教授 (80508341)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 都市環境気候図 / 計画指針図 / 気温分布傾向図 / 人工排熱 / 数値解析 / 費用対効果 / 建築設計教育 / 環境評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、環境配慮型都市の実現に向け、石川県金沢市中心市街地を対象とした上で、1)都市計画・建築設計の実務者が活用できる「都市環境気候図」と「計画指針図」の作成、および、2)建築設計支援のための「デジタル環境カルテ」の作成と設計教育での展開に取り組んでいる。 2021年度は、都市環境気候図と計画指針図について、大きく以下の3つを行なった。1)都市環境気候図の基礎情報の1つとなる夏季日中気温分布に着目した実測を行ない、夏季日中の気温分布傾向図を作成した。また以前作成した夜間気温分布傾向図との比較、緑地(金沢城公園)、河川(犀川)、道幅の狭い低層木造住宅地(旧市街)の熱的影響の考察も行なった。2)夜に高温傾向にある繁華街・片町に着目し、その高温化要因について、特に室外機と自動車からの排熱に着目した上で、現地調査と熱流体解析を通した分析・考察を行なった。3)2020年度に行なった意見交換会での知見等を基に、計画指針図の一部見直し、具体策の数値解析と費用対効果による評価に取り組んだ。さらにその結果を基に、行政(金沢市)および建設コンサルタントと意見交換会を行なった。 デジタル環境カルテと設計教育に関しては、敷地調査の次のプロセスであるボリュームスタディおよび、平面・断面計画における環境評価と設計へのフィードバックに着眼し、「建築設計プロセスにおける環境評価手順書」を作成した。「中間期の通風」「夏季の日射遮蔽」「冬季の日射取得」「年間を通した昼光利用」に着目し、それぞれで評価基準を定めた上で、授業の設計課題に沿い、学生が理解できる形での手順書(教材)を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
繁華街・片町における高温化要因分析については、新型コロナウイルス感染症のまん延防止等重点措置により(コロナ以前のように)店舗が夜間に営業している状況での実測が難しく、また同時に大学による活動規制により夜間の現地調査実測を行なうことも困難な状況にあった。それに伴い、コロナ以前を想定した夜間営業店舗による排熱、夜間のタクシー縦列駐車による排熱について、現地調査実測による数値解析モデル設定が困難であった。そのため本研究では、限られた現地調査結果と既往研究データ等を用いて、熱流体解析上で室外機と自動車による排熱をモデル化し、それらが道路気温を上昇させる度合いを分析した。ただし自動車の排熱モデルについては不十分であり、今後の課題である。 実測を通した夏季日中の気温分布傾向図は順調に作成することができた。また、計画指針図に関して、具体策の数値解析と費用対効果による評価、および行政、建設コンサルタントとの意見交換会はおおむね順調に行うことができた。ただし費用対効果について、費用も効果も諸条件により振れ幅が大きく、信頼性は高くないと考えられる。 建築設計プロセスにおける環境評価手順書については、初学者に向けたものであり、「日射の影響」を簡易的に「照度」で評価しており、その点は今後の課題である。また通風の評価基準、日射の影響の床面積での評価基準なども参考にできる先行研究の事例が少なく、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
環境配慮型都市の実現に向けた計画指針図について、2021年度の意見交換会でも話題に上ったタクティカルアーバニズムに着目する。タクティカルアーバニズムとは実践的な小さな社会実験を行いながら、長期的なまちづくりの変化や動向へ繋げていくものである。2022年度は金沢市に多く存在する用水の利活用として、用水による道路散水とそれによる暑熱環境緩和の実践に取り組む。またそれと合わせて、2021年度に取り組んだ気温分布傾向図、繁華街・片町での人工排熱分析の結果・知見などを取り入れ、計画指針図をまとめる。 デジタル環境カルテと設計教育に関しては、建築設計プロセスにおいて、敷地調査で用いる3Dデジタル環境カルテ、ボリュームスタディと平面・断面計画で用いる環境評価手順書など、各プロセスでの教材・指導書の拡充と整理に取り組む。
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Causes of Carryover |
GIS編集用パソコンを購入予定であったが、金沢工業大学の教育研究設備予算でパソコンを購入できたこと、また他の卒業研究テーマとの兼ね合いでパソコンの融通が利いたこと等により、2021年度のパソコン購入台数が計画より減った。2022年度はタクティカルアーバニズムとして用水による道路散水等の実践とその影響調査を行うため、機材・資材購入と人件費・謝金に対しての使用を計画している。
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Research Products
(2 results)