2020 Fiscal Year Research-status Report
都市空間における「ゆらぎ」を内包した複層的オーセンティシティの解釈手法の開発
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20K04828
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
内田 奈芳美 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (10424798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂村 圭 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特任助教 (30793749)
菅野 圭祐 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (80778093)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オーセンティシティ / 都市空間 / まちづくり / 開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「都市空間における『ゆらぎ』を内包した複層的オーセンティシティの解釈手法の開発」として、定義の定まっていない概念である都市のオーセンティシティ(Authenticity)について、解釈・事例調査・現場のまちづくりを連動させて明らかにし、日本型の現代都市のオーセンティシティの解釈方法を開発するものである。本研究では都市のオーセンティシティには「客観的」「構造的」「経験的」の複層的段階があり、その中で解釈の「ゆらぎ」があると仮定する。その上で解釈の枠組みの理論的基盤を確立させ、現場での都市空間への適用を、経験的オーセンティシティの認知調査を含めたアクションリサーチとして行ってきた。以下、具体的な内容である。 今年度は、まず理論研究として建築・都市計画分野と観光学など隣接分野も含めた理論の整理を行い、分析のための基盤を形成した。このことは研究成果として観光学術学会における査読論文においてまとめられている。また、建築学会で発表予定である景観に関する梗概においても分析のための理論基盤として示している。 次に「オーセンティシティ」概念の現場での都市空間への適用を考えるための事例研究として、石川県金沢市で「金沢らしさ」を考えるためのワークショップを複数回行った。その中では、中心部の特定の敷地を対象としながら、個人的な都市のオーセンティシティの解釈を超えた、他者との共有に基づく解釈のゆらぎについて分析を行った。このことは、建築学会で発表予定である梗概において分析をまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、コロナ禍による行動制限によって現地調査等を行うことができなかった。そのため、実際の事例について、都市空間としての分析やインタビュー調査等を行うことが困難であった。一方で、研究チームとしては定期的にオンラインによる議論を重ね、理論の全体像や現在の課題、そして研究方法について議論を深めることができた。これらの議論から、オーセンティシティの解釈のありかたについて分析軸を構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査を阻む事態が今後も想定されるが、機会を見て、オンラインも適切に用いながら調査を行っていく予定である。今後の推進方針については、第一にオーセンティシティの個人的解釈についての分析である。これは、インタビュー調査を通して行っていくものであるが、このような分析の積み重ねから集団知としてのオーセンティシティのあり方を考察していく。このことは、アクションリサーチと連動して進めていく。 第二に、オーセンティシティの空間的方法論の分析である。事例調査をできるかぎりすすめ、オーセンティシティの構築における空間的側面からの方法論を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本来であれば対面での打ち合わせや事例調査を行うことを想定しており、それらが2020年においてはパンデミックの影響で不可能であった。そのため、特に旅費としての支出がかなり少なくなり、次年度使用額が生じた。2021年度は、状況を見ながらではあるが、現地での事例調査を行うこと、また、アクションリサーチの継続のための旅費の支出を行うことを予定している。
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